食道がんの基礎知識

他の癌と比較しても、食道がんは死亡率が高い部類に入ります。したがって、症状があるなら早期発見し、治療を開始することが必要です。悪化してから見つけるよりも、早めに対処することが生存率を向上させるための鉄則です。

年齢で見ると、40歳代後半以降になると増加し、男性は女性のおよそ5倍の罹患率となっていますので、男性は特に注意が必要です。食道がんの原因としては、飲酒と喫煙が関係していますので、両方に当てはまる方はリスクが高いことを意識してください。また、熱い物をそのまま飲み込むことも、罹患率を高くすると考えられています。

初期症状のうちは目立った兆候がほとんどありません。検診によってこの段階で発見できれば、早期がんであることが多いため、根治できる可能性が高い状態と言えます。進行していくと、食べ物を飲み込む時にしみることや、食べ物がつかえる感覚が出るようになります。他にも、咳や声のかすれといった症状が出る場合があります。

残念ながら、食道がんの症状が出るようになっている状態では、すでに進行してしまっていることが多くなります。したがって、初期症状を見逃さないためには、何も兆候がなくても人間ドックや健康診断を受けておき、体の状態をチェックしておく必要があります。

検査の方法としては、レントゲンや内視鏡、超音波検査、CT、MRI、PET、腫瘍マーカーなどがあり、それぞれに向き不向きがあります。検査によって食道がんであることが分かったら、ステージを判定する必要があります。食道がん取扱い規約によってステージ分類の基準が示されていますが、この他にもTNM分類が使われることがあります。日本と欧米を比較すると、細胞の種類(日本では扁平上皮がんが多いが、欧米では腺がんが多い)などがことなりますので、分類の仕方も多少異なります。

取扱い規約の分類では、0期から4期にステージが分かれ、4期が最も進行したもので、末期のケースもあります。ステージが4期になると他の臓器や原発巣から離れたリンパ節にまで転移している状態になります。

当然ながら、早期のステージは末期に近づいた場合よりも生存率が高い傾向があります。また、生存率は病院によっても差がありますので、食道がんの名医がいる病院を選んでおきたいものです。

治療は内視鏡治療、外科手術、化学療法、放射線治療が中心となります。外科手術による機能障害や、それぞれの治療による副作用といった負の側面についても、事前によく把握しておきましょう。症状の改善は重要ですが、闘病生活においては副作用に悩まされることも多くあります。その時になって戸惑わないようにあらかじめ理解を深めておく必要があります。

食道がんの治療法を始めとした基本的な知識を得るなら、ガイドラインを読んでみるのもお勧めです。ガイドラインによって理解を深めておけば、不要な心配をしなくて済みます。実像が見えないことが恐怖心をあおる要因でもあるのですから、まずは正しい知識を持っておくことが大切です


食道とは

 喉と胃の間をつないでいるのが食道で、太さは2cmから3センチほどの管です。食べ物が通るため、粘液を分泌する粘膜で覆われており、食事の際には口から飲み込んだ食べ物を、今で送り込む働きを果たしています。

 重力の力だけでは、横になって食事をしたら食べ物が今で到達しないはずですが、寝ながらでも食事できるのは、こうした食道の働きがあるからです。


熱い飲食物が食道がんの原因に

 食べ物や飲み物が熱いまま飲み込むと、食道がんのリスクが高まります。飲食物の通り道ですので、ダメージを受けることは想像できると思います。日常的な習慣の問題ですので、食事の時には気をつけておきましょう。

 極端に熱い状態のままでは飲み込めても病気になる危険が高いため、少し冷ましてからにすることが、予防につながります。

 このほかにも、喫煙や飲酒の習慣もリスクを高める原因になります。したがって、禁煙やアルコールを適量に控えることも、予防になるのです。



食道がんとアルコール

 食道がんの大きな原因のひとつに、アルコールが挙げられます。アルコールは、のどを痛める元でもあるのです。のどの粘膜がダメージを受け、細胞に過度の刺激を与えてしまいます。その細胞が、がん化するというワケ。昔から「酒は百薬の長」と言われているように、適度な飲酒は健康維持には有効的。

 けれども、大量のアルコール摂取となると、話は別です。アルコールの摂り過ぎは、体に大きな負担を与えてしまうことに。また、アルコールの分解機能と食道がんも大きな関連があることが指摘されています。体の中でアルコールを分解するためには、「アルコール脱水素酵素」から、毒性の高い「アセトアルデヒド」へと一旦変化させます。


 次に、「アルデヒド脱水素酵素」の作用で「酢酸」へと変化し、徐々に体に無害な成分へと分解していくという仕組みなのです。ところが、「アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)」が先天的に欠落している、または機能が低下している状態においては、上手く分解されずアルコールによって発がんを招いてしまうことになるのです。


 「アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)」欠損も、食道がんの原因になり得るということなのです。この酵素(ALDH2)が不活性な方は、日本人には意外に多く40%を占めているとも言われています。食道がんは日本人に多いがんであることからも、アルコールとの関係は、特に注意が必要なのです。アルコールに弱く、お酒を飲むとすぐに顔が赤くなってしまうという方は要注意です。


 顔が赤くなるのは、アルデヒドが分解されず溜まってしまっている結果。分解されず、顔の血管が拡張している状態なのです。ですから、お酒を飲んで顔が赤くなりやすい方は、ALDH2が不活性という方が多く、食道がんへのリスクも高いということが指摘されています。アルコールによるがん発症を予防するためにも、飲酒は適量に抑えるようにしたいもの。

 もし、がんのリスクが高いのならば、禁酒をススメられる場合もあるのです


食道がんになりやすい人

 食道がんになりやすい人もあります。言いかえれば、食道がんになりやすい生活を送っている方ということ。もし、あなたも当てはまる項目があれば、改善できるように努力しましょう。食道がんになりやすい方とは、まず、喫煙、飲酒の習慣がある方。

 このどちらか一方でも、がん発症の原因となり得るのです。ましてや、どちらも習慣化している方となると、非常にハイリスクを背負っていることに。お酒を飲んだら、すぐに顔が赤くなるのに、付き合いでアルコールを飲む機会が多いという方。しかもタバコを吸いながら飲むことも多い・・・。こんな方は、高いがんのリスクを背負っていると自覚する必要があります。

 お酒の弱い方が飲み続けるということは、一般の方よりも食道がんの発症率を12倍にもアップさせるということ。要注意です。また、50才以上の方も注意が必要です。50才を過ぎると、体内にはかなりのダメージが蓄積されているものです。加齢による体の老化に伴って、蓄積されたダメージが一気にがん細胞化する可能性も高くなるのです。

 また、「逆流性胃炎」にないやすいという方も注意しましょう。炎症が長引くと、食道がん発症へと繋がる、「バレット粘膜」になってしまうことも。逆流性胃炎は見逃されやすい症状ですが、実は徹底的な検査を受ける必要がありますよ。さらに、性格的に心配性な方、イライラしやすい方も、食道がんになりやすいと言われています。このような性格は、免疫機能へも影響をもたらすことがあります。

 性格的なものもそうですが、日頃の食事も関係が深いと言われています。塩分の高い食事、辛い食事を好む方、野菜や果物の摂取量が少ない方は食生活を見直す必要があるでしょう。のどや食道の粘膜に負担を掛ける食事、ミネラル不足は、食道がんの原因となるのです。


 食道がんは、意識していれば、ある程度予防できるがんです。リスクの高い方や食道がんになりやすい性格の方などは、改善することを心掛けましょう。改善できる点は、しっかり見直す。これが一番簡単な、食道がん予防策と言えるのです。


食道がんと食事

 食道がんは、その名の通り食道で発生するがん。そのため、食事との関係も深いもの。当然です。栄養バランスのとれた食事で健康を維持することは、当然ですが、「がんになりやすい食べ物」というのがあることも分かってきました。発がん性があると言われているのが、肉や魚の焦げです。

 焼きすぎで焦がしてしまうと、「ニトロソアミン」という有害物質が生成されるのです。「焦げた部分がおいしい」という方もいるかもしれませんが、焦げは、できるだけ食べないようにしましょう。また、刺激の強い食べ物も食道がんを誘発してしまう可能性も。カフェインやスパイス、カプサイシンが含まれる唐辛子や、高すぎる塩分は粘膜にダメージを与えてしまうことに。がん化を促してしまうのです。

 また、熱すぎる食べ物も、食道の粘膜には、あまりよくありません。お茶、お味噌汁、かけそばなど、熱々のまま口にすると、非常においしいのですが、温度が高すぎると粘膜を痛めることもあるのです。熱いものを飲み込んだ後、のどの奥が痛いと思うことはありませんか?そんな方は要注意なのです。食道の粘膜を傷めている可能性大。

 食道がんを予防するために、適温に冷ましてから口にするよう心掛けましょう。食道がん予防のためには、濃い味つけのお料理は避け、ビタミン・ミネラルが豊富な食事を適度に冷ましてから頂くように心がけましょう。坑酸化作用の高い食べ物を積極的に摂るように心掛けることも大切です。食事に関しては、食後、食べ物が逆流しやすい体質の方も要注意。

 食べ物が逆流して、食道の内側の粘膜がダメージを受け、がん化することもあるからです。1回の食事量を少なめにして、食事の回数を増やすようにしましょう。そうすれば、吐き気が起きることも少なくなるでしょう。食道がん予防のために、食事にちょっと気をつけてみましょう。その心掛けが、結果的に予防効果を高めてくれるのです。



食道がんの自覚症状

 初期のうちには食道がんの自覚症状はほとんどありません。そのため、この時期に発見される場合には、検診によって見つかることが多くなります。この段階で治療を開始することができれば、治癒できる可能性が高く生存率も高くなります。

 進行した食道がんは自覚症状として、食事の時に喉に痛みやイガイガした感じが残ったり、熱い物を食べた時(飲んだ時)に胸がしみる、固形物が飲み込みづらいといった兆候が現われるようになります。さらに進行していくと、食べ物がつかえる度合いがひどくなり、やがては飲み物さえ喉を通らなくなることもあります。

 食事の場面以外では、声が嗄れることによって症状を自覚するケースもあります。また、転移が起きている場合にはそれによって生じた兆候で気付くこともあります。たとえば、肺転移の場合には呼吸困難や咳といったものがあります。転移がある状態になると、一般に予後が悪いことが多くなります。

 喫煙習慣のある方は食道がんになりやすいのですが、自覚症状は喉に関するものが多いため、タバコの影響で喉の調子が悪いだけと錯覚してしまうこともあります。長く続くような場合には、特に要注意だと考えておいてください。

残念ながら、自覚できる時には進行してしまっていることが多くなりますので、早期発見の期待は薄くなります。それでも、病院を受診しておくのは少しでも早いほうが望ましいので、迷ったら念のため病院に足を運びましょう。


食道がんの初期症状

 もし、自分に食道がんかもしれないという自覚があるのでしたら、迷うことなくまずは診断を受けることをオススメします。

 発症する年齢は50歳から多くなり、60歳でピークを迎えるようですが、初期症状は一体どのようなものなのでしょうか。

 食道がんの初期症状は殆ど無いでしょう。

 食道がんになる人は10対1の割合で男性が多いようです。なかでも食道がんになる人の多くは、お酒やタバコが好きな人、熱い食べ物や塩辛い食べ物が好きな人が多いです。

 食道がんの初期症状は先ほども述べた通り、自覚症状がないのが多いですが、中には胸の奥がわずかにしみるような初期症状を経験する方もいます。食物が通過する感じを自覚する方もいます。

 食道がんの初期症状から中期へと移行すると、物を食べた時の固形物が通過困難になると共に、痛みを感じるようになるでしょう。食道がんにも無症状食道がんが20%であると言われています。

 食道がんの初期症状が発症して1年以内に死亡してしまう人が多い病気で、5年以上の生存率も5%と、とても死亡率の高い病気なのです。

 食道がんの初期症状が殆どないので、がんが転移して初めて食道がんであるとわかる場合が多いのです。食道がんの初期症状を早期発見するためにも、定期検診などを受けるようにしましょう

食道がんの初期症状と進行具合

 食道がんの初期症状は「沁みる感じ」
 喉が沁みる感じや詰まる感じは、よくある症状。しかし長引く場合やいつも起きる場合は注意が必要です

 食道がんの代表的な初期症状の1つが沁みる感覚。食道がんも他のがんと同様に粘膜から発生するため、最初の症状は粘膜の荒れに伴う感覚異常から起きます。

 例えばかなり熱い物を食べた時など、いわゆる喉元からお腹にかけてツーッと食べ物が落ちていく感じの経験がある人は多いと思います。普段は意識しないものの、人間の食道の感覚は鋭敏で比較的正確なのです。ここに異物があると「何だか沁みる」という自覚症状として異変に気づくことができます。


 進行した食道がんでは「詰まる感じ」
 また初期症状から少し進行すると、食道の内側に向かって腫瘍が盛り上がったり、食道の壁が固くなったりするので、食べたものが通りづらくなります。具体的には、食べ物が喉元や胸のあたりで詰まるような違和感が出てきます。

 喉が詰まる感じは他のさまざまな疾患でも起こる症状で、心配ないものがほとんど。しかし食道がんの「詰まる感じ」は、再現性があることが特徴です。

 普段は違和感がないが、たまに詰まる感じがする程度なら通常は心配ありません。「液体は通るが、固形物が詰まる」「これぐらいの量のご飯を食べると、毎回必ず詰まる感じになる」など、毎回同じ症状がある場合は、早めに内科を受診することをお勧めします。

 声がれや咳・血痰にも要注意症状がもう少し進むと声を出す神経が影響を受けるため、声がかれたり、かすれたりする場合があります。食道にできた腫瘍が隣接する臓器である肺や気管支へと浸潤することで、咳や血の混じった痰が出てくることも。

 もちろん声がれや咳は風邪でも見られる症状なので、心配しすぎることはありません。しかし、通常の風邪なら数日から10日ぐらいで軽快していくのが普通。声枯れや咳が長引く場合や、風邪症状を伴わなかったり、上記のような沁みる感じや詰まる感じを伴う場合は、やはり内科を受診するようにしましょう。



自覚症状なども含めた食道癌の症状について

 食道がんは、先ほども述べたように、発見が遅れやすいガンでもあります。
そのため、どういった症状が食道がんの症状としてあるのかを知っておき、不安や何か思う事があれば、確認をして早期発見に努めなければなりません。

 では、食道ガンの症状としてどういったものが挙げられるかというと、まず1つ目としては、何か物を食べた際に、つかえを感じたり、しみる感じを覚えるという事が挙げられます。

 これは食道がんにおける初期症状に当たるのですが、何か熱いものを食べたというような場合でもしみるような感じを覚えたりする事が挙げられます。

 また、がんが少し進行して大きくなってくると、食道の内腔が、ガン細胞の増殖によって狭まれてしますため、食べ物を飲み込もうと思った際に多少つっかえた感じがするようになってきます。

 また、食道ガンの2つ目の症状としては、嘔吐が挙げられます。
これがなぜ起こるのかというと、そもそも食道癌が大きくなり、食道を塞ぐ程までの大きさになってくると、当然ながら食べ物や飲み物を飲み込もうと思ってもなかなか飲み込めなくなってしまい、そのために吐いてしまうのが原因となります。

 そして3つめの症状としてが、咳や血痰というのがあります。

 これは食道ガンが進行してしまって、その範囲が気管や肺にまで達してしまった場合に、それらを刺激して咳や血痰が出るといった症状が見られる場合があります。

 4つ目としては、胸痛が挙げられます。
これも、食道がんが進行してしまって、その範囲が背骨や肺にまで達してしまった場合に、胸の痛みであったり、背中の痛みという症状が見られる場合があります。

 そして5つ目の症状として挙げられるのに、嗄声があります。これは「させい」と読みますが、もともと食道の横には、声帯の動きを調節してくれる神経が通っているのですが、食道ガンが進行してしまって、それらの神経までも侵してしまうと、嗄声が起こるといった事があります。

 そして、食道がんになると、食事がまともになかなか取れなくなるという事の影響で、体重が減少するという症状も見受けられます。



食道がんの原因を知った上での予防対策

 食道ガンというのはなぜ起こるのでしょうか。なぜ起こるのかという原因などを知っておくことで、がん予防やガン対策なども考えていけるようになります。

 そもそも、食道がんというのは重荷食道粘膜の刺激によって引き起こされると言われています。

 具体的にどういうことかというのを解説してみると、まず1つめとしての原因がたばこの摂取に当たります。

 これは、タバコに含まれている有害物質によって、食道の粘膜が刺激されてしまい、食道がんになってしまう可能性が高まるのです。

 またタバコだけでなく、アルコールも適量ではなく過度に摂取してしすぎると、食道粘膜を傷つけてしまう事になりますので、この事から食道がんになってしまう可能性が高まるといえます。

 さらには、食道粘膜を傷つけるという観点から言って見れば、熱い飲み物などに関しても同様の事が言えますので食道がんになってしまうリスクというのは少なからず高まると言えます。

 そして、食道がんになる可能性が高い状態においては、バレット食道と呼ばれるものがあります。
このバレット食道というのは、胃液が逆流する事によって食道の粘膜が障害を受けてしまい、その再生と障害が長期間にわたって繰り返されてしまっていくうちに、食道の粘膜が胃の粘膜に似た構造へとなってしまうことを言います。

 こういった危険因子が食道がんには存在します。
タバコは吸うだけでもそうですし、アルコールなどの摂取も、適量に抑えておくように心がけたいところです。


食道がんの死亡率

 食道がんは悪性度が高いといわれていますが、

 早期発見できれば、内視鏡的粘膜切除術で切除された後の5年生存率は100%です。

 内視鏡的粘膜切除術で切除できない場合でも、手術で切除できれば
��年生存率はほぼ100%です。

 ただ食道がんは転移しやすいという特徴があり、頸のリンパ節などへ転移しやすいといわれています。

 リンパ節への転移があった場合、生存率は大幅に低下し20%程度とも言われています。

 食道がんはリンパ節から、早期に肝臓、肺、骨、脳などに転移します。

 いったんこのような臓器に転移すると、化学療法を行うしか方法がありません。

 よって、食道がんは何より早期発見が重要です。

 特に食道がんは、いったん進行すると急に治癒率が下がります。

 人間ドックでの検査を恐れず、少しでもおかしいな?という自覚症状があったら検査を受け、
早期発見・早期治療を行いましょう。


食道がん・お酒が弱い人も要注意

 食道がん発症のリスクを高める原因「飲酒・喫煙・遺伝子タイプ」
 食道がんになるリスクが高くなるのは、「飲酒」「喫煙」「遺伝子タイプ」の3つが重なった人。
こんな研究結果が出されました。

 大阪大学と九州大学の共同研究によるもので、「飲酒」「喫煙」が高リスクなのはすでに知られていますが、問題は3番目の「遺伝子タイプ」。

 遺伝子タイプとは、体内のアルコール処理能力が高いタイプか低いタイプかという意味です。

 お酒を飲んで体内に入ったアルコールは、酵素の働きで「アセトアルデヒド」に分解され、別の酵素の作用で、無毒の「酢酸」に変わります。


         


飲酒喫煙でリスク上昇

 なぜ飲酒と喫煙が食道がんのリスクを高めるか
 食道がんの中でも、日本人に多いのが「食道扁平上皮癌」です。

 お酒にふくまれるエタノールは、体内で分解されてアセトアルデヒド(二日酔い物質)となります。
このアセトアルデヒドには発がん作用があるため、食道が長期間高濃度のアセトアルデヒトにさらされると、食道がんになりやすくなります。

 またアセトアルデヒドがたまりやすい体質の人は、食道癌の危険が高い(食道癌高危険群)ということになります。

 飲酒によって顔が赤くなるのはアセトアルデヒドによる作用ですので、少量の飲酒で顔が赤くなる(または若いことは赤くなった)人は、アセトアルデヒドがたまりやすい体質です。

 このような体質の人で、以前は余り飲めなかったのにだんだん慣れてきて、お酒を飲めるようになり、ほぼ毎日にように大量の飲酒を続けると、食道癌になりやすいということになります。

 飲酒に喫煙が加わると、食道癌の発がんリスクがぐんと上昇します。
飲酒と喫煙を止めれば、食道がんののリスクは5年で4分の1に減るといわれています。

 飲酒喫煙の習慣がある人は、食道がんにかかるリスクが高いのは明確です。
早期発見のために、人間ドックを受けましょう

食堂がん発見のための検査

 食道造影検査
 食道と胃のX線像です。バリウム(銀白色の金属化合物)を飲んで、X線撮影を行い、食道病変の有無を確かめます。ただし、がんができてから間もない早期病変の診断は困難です。

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 内視鏡検査(胃カメラ)
 内視鏡(細く、ライトの付いたチューブ)を口または鼻から胃まで挿入して胃・食道内部を観察し、食道病変の有無を確かめます。進行したがんのみならず粘膜面にとどまる早期がんの診断に有用です。
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 生検

 食道がんの疑われる部位の細胞または組織の一部を取って顕微鏡で観察し、がんの有無を調べます。通常、生検は内視鏡検査中に行われます。


食道・胃・十二指腸造影検査(GIS)

 目的
 バリウムと空気による二重造影法によって,食道・胃・十二指腸などの消化管の粘膜の病変をX線写真として,撮影します。


◆検査の方法  検査の始まる2~3分前に,胃や腸の蠕動(動き)をおさえる筋肉注射をします。

少量のバリウムを飲んでから,胃を軽く圧迫しながら,撮影します。
一口バリウムを口の中にほおばっていただき,合図と同時に飲み込んでください。食道の撮影をします。( 数回くりかえします。)

 発泡剤という薬をのんでいただきます。このお薬は胃の中で溶けて,ガスとなり胃を膨らませます。バリウムを約150ml飲んでいただきます。

 胃が膨らんだ状態で,うつ伏せから,仰向けになたりして体を回転させて,胃の粘膜上にバリウムをコーティングして,X線写真を撮影します。(二重造影法といいいます。)

  したがって,できるだけ合図にしたがて,右をむいたり,左を向いたりして,体位変換をしていただきます。このようにして,X線写真を撮影します。

 検査時間は人によって異なりますが,およそ20~30分程度です。


◆前処置(検査のために必要な準備事項)
検査前日の夕食は,8時までにすませ,その後は食べないでください。
検査当日は一切の飲食物・タバコ・ガムなどとらないでください。 (ただし,医師から処方された血圧・心臓・喘息などのお薬は飲んでください。)

 このように,胃の中をからっぽにした状態で,検査をすることが最も重要です。 胃の中に,食べ物が残っていたりすると,胃粘膜上の病変と重なったりしますと, 正確な診断に差し支えますので,前処置を必ず守ってください。


 ◆注意事項
緑内障・前立腺肥大症・心臓疾患などのある方は,また食物・薬物アレルギーのある方は,検査当日にあらかじめ看護師に申し出てください。

 検査当日に,飲食された場合は,あらかじめその旨を看護師に伝えてください。

 妊娠のあそれのある方は,検査できませんので申し出てください。


内視鏡検査

 胃の電子スコ-プは、病変を詳しく調べるために、直接テレビ撮影し、ビデオにも記録できる、最新の検査装置です.レントゲン検査よりもはるかに,また以前の胃カメラやファイバ-・スコ-プよりもいっそう詳しく病変が観察できるのが特徴です.

この検査では,食道,胃,十二指腸の形態の変化,潰瘍,腫瘍あるいは各種の炎症性病変の診断ができます.生検といって病変の一部を採取し,病理検査によって手術が必要な病変か,そのままお薬で経過を見てよい病変なのかを鑑別することもできます.

 以前の装置に比べ検査中の苦痛も少なくなりました.特に反射が強く、つらい経験をした方は、軽く眠っている間に終わってしまう方法も選べます.安心して検査をお受け下さい.


 検査前日まで(前の晩)の注意

 抗血栓薬(ワーファリン、パナルジン、プロサイリン、プレタール、バイアスピリン等)を服用中の方は、休薬と再開の時期を主治医と相談して決めてください.休薬しなくても検査はできますが、生検(病理検査)は出来ないことがあります.通常は検査前約1週間の休薬が必要です.

 前日の夕食は,普通に食べて下さい(海苔、昆布、ワカメなど消化の悪いものはさけて下さい).

 その後,就寝まで水分(お茶,水)を充分摂取して下さい.


 検査当日(朝)の注意

 検査の日は朝食を食べずに来院して下さい.

 糖尿病の薬、抗血栓薬以外で、いつも朝に服用している薬は少量の水で服用してかまいません.

 歯も磨いて結構です.少量のお水は飲んでも大丈夫です.

 入れ歯のある方、特殊なお薬を服用している方、アレルギーや体の具合いの悪い方は看護婦に申し出て下さい.

 反射が強いため以前の検査で苦しい思いをされた方は、安定剤で軽く眠っている間に検査を受ける方法も選べますので申し出て下さい.(その方は、車の運転をしないで来院して下さい)


 検査前の処置

 ゼリー状の麻酔薬とスプレーでのどを麻酔し、ベッドに仰向けに寝ます.

 腕に胃の緊張を取る注射をします.反射の強い方には安定剤で軽く眠っている間に検査ができる注射をします.
 

 検査の後は

 検査の後、約2時間は,のどの麻酔がきいていますから,飲んだり食べたりしないでください.その間は,下を向いて軽く口をすすぐ程度にして下さい.

 2時間位経って、のどがいつものような感じになったら、少量の水を飲み、むせずにうまく飲込める事を確かめてから飲食をはじめて下さい.

 安定剤の注射をした方は,少し長めに休んでもらいます.念のため帰宅後もしばらく安静にして下さい(その日は車の運転をしないで下さい).

 結果はビデオにより、その場でごらんになれます.

 色素散布をされた方は、検査後尿や便が青みがかることがありますが、色素が排泄されるためで、すぐに元に戻りますから心配しないで下さい.

 生検(病理検査)の標本を採取された方は、胃粘膜から少量の出血がありますので、検査当日は刺激物(香辛料、柑橘類等)や酒類の摂取は控えて下さい.翌日の便が、少し黒っぽくなることがあります.その後も、黒いタール様の便が続くようでしたら、すぐにご連絡下さい.

 組織の生検をされた方は、病理検査の結果が10日から2週間後には出ますので、必ず結果を聞きに来院して下さい.

検 査後、大量の血を吐いたり、黒いタール様の便が出るときは、すぐに病院に連絡して下さい.


 


生検

 生きている人間、すなわち生体から組織の一部を採取し、その組織学的形態像から病気の診断を行う方法で、バイオプシーbiopsyともいう。

 皮膚生検のように体表から生検を行う場合には、その方法は比較的簡単であるが、体内の臓器から生検をする場合には、ファイバースコープを代表とする内視鏡を介して生検する。

 たとえば食道、胃、小腸および大腸のような消化管では、ファイバースコープによる直視下生検が行われている。

 また、肝臓に対しては腹腔(ふくくう)鏡直視下に行う肝生検のほか、内視鏡を使わない盲目的な肝生検も行われている。

 なお、胃癌(がん)とくに早期胃癌の診断には胃生検が不可欠である。また、従来生検が困難であった膵臓(すいぞう)に対しても、膵生検が試みられるようになった。

食道がん進行度診断のための検査

 がんの種類およびがん細胞が食道内にとどまっているか、それとも体の他の部分まで拡がっているかを調べるために行われる検査を「病期診断」といいます。

 病期診断のために行われた検査から得られた情報から、疾患の病期が決定されます。治療計画を立てるためには病期を把握することが重要であり、病期診断のために行われる検査や方法には次のようなものがあります。

CT検査食道がんの大きさ・周囲への浸潤・リンパ節への転移の有無・肺や肝臓などへの遠隔転移の有無を評価します。

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PET検査(陽電子放射断層撮影検査)体内にあるがん細胞をみつけるための検査です。悪性のがん細胞は正常の細胞よりも活発で、グルコース(糖)をより多く吸収します。PET検査では、少量の放射性グルコースを静脈内に注射し、その取り込みの分布を撮影して悪性がん細胞を検出します。糖の取り込みが多い部位は強く染まることで全身の転移の有無を検索し、食道がんの病期決定に役立てます。特にCT検査による判断が困難な転移の評価に有用な場合があります。

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超音波内視鏡検査(EUS)外見上は内視鏡(胃カメラ)と変わりないのですが、食道内壁の粘膜を観察する内視鏡検査と異なり、内視鏡の先端についた超音波装置を用いて粘膜下の状態、食道の壁や食道壁外の構造などを観察することができます。つまり、食道がんがどのくらい深く進展しているか、周りの臓器(気管や血管)へ喰い込んでいないか、食道の外側にあるリンパ節が腫れていないか(リンパ節転移の有無)などについてのより詳細な情報を得ることができます。これは、治療方針の決定に非常に重要な役割を果たします。


食道がんの再発について

 食道がんの初回治療としての策として内視鏡的治療、科学放射線治療、根治的手術などいくつかの治療法、完治にむけての方法がありまた、再発食道がんの治療も種類により個別に考えなくてはならない。

 また再発の種類によっても治療が異なる。遠隔臓器再発、リンパ節再発、局所再発すべて治療法が異なる。初回治療が完璧に完治としても再発となる場合は多いようである。

 だが再発治療の場合、治療はもちろん積極的治療を望むが腫瘍増悪を抑える治療あるいは、QOLの改善を目的とした治療が多くなります。

 また再発がおこらないためには術後のフォローが必要と考えます。まず退院から二週間ほどしたら受診なさること。退院後、自宅でスムーズな生活ができているか、食事分量など、風邪、肺炎の危険はないかなどの確認をする。

 大体退院後の受診の場合は原則として三ヶ月毎と決まっています。質疑応答、腫瘍マーカーなどの受診はこの様な進行ですが転移などのCTなどは大体六ヶ月毎としています。次に内視鏡検査は年一回ペースで行なう。

 このように術後、退院後のケアは非常に大切で再発を防ぐためにはもっとも重要です。

 また外来抗がん剤治療や短期間での入院での抗がん剤治療なども再発防止に大きく役立っていますし、万が一に再発の場合にも積極的治療を行い、より患者の症状に適した治療法で最適な治療を行なっています。

 患者自身も根治したからと喫煙などは死亡とまでに及ぼす原因となりますからおやめになることが再発防止の手段でもあります。


食道がんが再発した場合の治療

 初回の治療で完全に治ったように見えても、食道がんが再発することがあります。同じ部分だけではなく、リンパ節や肺、肝臓、骨などへの転移として発見されることもあり、こちらが主流と言えます。

 再発食道がんの症状は、部位によって異なります。たとえば、首のリンパ節の場合には声が枯れてくることや、首の腫れを感じることがあります。

 骨転移の場合には該当部分の骨の痛みを感じます。肺や肝臓の場合には症状が目立たない傾向がありますが、悪化すると腹部の張りや咳、胸の痛みといった症状が見られるようになります。

 残念ながら、再発した場合には良好な予後が望めることは少なく、余命が半年ほどに限られてしまうのが一般的です。このような厳しい現状がありますので、できるだけ初回の治療によって完治させておくことが大切です。

 また、食道がんが再発した場合に早めに発見するためには、こまめに経過観察を行う必要があります。

 治療が終わったのに病院に頻繁に通うのは気が進まないかもしれませんが、必要なことですので指定された時期に通院してください。

 治療の方法は部位や初回に行った治療法によっても異なり、一概には言えません。ただし、手術できることはまれで、放射線療法や化学療法を行うことが中心になります。

 鎮痛剤によって痛みを軽くすることも行われています。

 現状として、再発食道がんが治癒する確率は非常に低いと言わざるをえません。

 非常に死亡率が高くなってしまうので、末期に向けての覚悟をしなくてはならないことが多く、余命とも向き合っていくことになります。

 再発に影響を及ぼすたんぱく質が特定されたというニュースがありますので、今後はこの研究から派生した治療法が開発されることによって、克復への道が開けることになるかもしれません。

 医療においては、現在の状況が続いていくだけではなく、どんどん水準が向上していきますので、未来に向けて最新の方法は進歩しています。



食道がんの再発の可能性

 がんの治療や切除手術を受け、治療や手術後にはまったく見られなくなったがん細胞が、また、増殖し始めることを再発といいます。
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がん細胞は、切除できる大きさのものから、顕微鏡で見なければわからないほどの小さながん細胞もあります。
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 食道がんが再発する場合、最初に手術で食道を取り除いている場合も多く、リンパ節、肺、肝臓、骨などに転移している場合が多いそうです。

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 また、食道がんには、頸部食道がん、胸部食道がん、腹部食道がんがありますが、がん病巣が大きかった場合に、その部位から再発する可能性も高いという説もあります。

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 食道がんの再発の早期発見は、治療後に定期的に受ける診察によるものも大きいです。

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 通常は、食道がんの治療や手術後に、1ヶ月に1度程度の診察を受け、病後の体調や再発していないかなどをチェックします。

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 それからしばらくすると、3ヶ月に1度、6ヶ月に1度というように、診察の回数も減ってきます。

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 ただし、食道がんの進行度合いが重度であった場合は、早期の食道がんに比べ、再発の可能性が高いため、定期的に診察を受ける必要があります。

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 また、食道がんの再発は、再発した部位ががん細胞に侵されていることによる自覚症状によりわかることもあります。

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 食道がん自体は自覚症状の少ないがんですが、たとえば、リンパ節に転移すると、転移したリンパ節の場所にもよりますが、痛みや腫れを感じることがあります。

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 また、骨に転移した場合には痛みを感じます、食道がんの治療後、手術後には、身体の少しの変化でも気をつけるようにし、違和感を覚える場合、痛みを伴う場合は、早急に担当医の診断を受けるようにしましょう。

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 食道がんが再発した場合には、残念ながら、治る可能性はとても低いものになってしまいます、余命は早ければ3ヶ月で、治療効果にもよりますが、食道がん再発後の余命は半年から1年といわれています。

食道がんの進行度

食道がんの治療法を決めたり、また治療によりどの程度治る見込みがあるかを予想したりする時に、どれくらい病気が進行しているかをあらわす進行度分類(病期:ステージ)を使用します。

日本では日本食道学会の「食道がん取扱い規約」に基づいて進行度分類を行っています。

最近では欧米を中心に国際的な分類であるUICCのTNM病期分類も使われる場合もあります。

各検査で得られた所見、あるいは手術時の所見により、深達度(がんの深さ)、リンパ節転移、他の臓器の転移の有無にしたがって病期を決定します。


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食道がん病期:ステージ

0期(上皮内がん)
がんが粘膜にとどまっており、リンパ節や他の臓器にがんの転移・浸潤が認められないものです。いわゆる早期がん、初期がんと呼ばれているがんです。

Ⅰ期
がんが粘膜にとどまっていますがすぐ近くのリンパ節のみに転移があると判断された時、あるいはがんが粘膜下層まで拡がっていますがリンパ節や他の臓器にがんが認められなければⅠ期と分類します。

Ⅱ期
がんが筋層を越えて食道の壁の外にわずかに出ていると判断された時、あるいは食道がんが筋層にまで拡がり、すぐ近くのリンパ節のみにがんがあると判断された時、そして他の臓器にがんが認められなければⅡ期と分類します。

Ⅲ期
がんが筋層を越えて食道の壁の外に明らかに出ていると判断された時、あるいは食道のがんから少し離れたリンパ節にがんがあると判断された時、そして他の臓器にがんが認められなければⅢ期と分類します。

Ⅳ期
がんが食道周囲の臓器に喰い込んでいる(浸潤している)か、がんから遠く離れたリンパ節にがんがあると判断された時、あるいは他の臓器にがんが認められたらⅣ期と分類します。

食道がんの治療

 治療方針
外科療法(手術)手術は食道がんに対する最も一般的な治療法です。

放射線療法放射線療法は放射線を用いてがん細胞を殺すがん治療のことです。放射線をがんの局所に照射してがん細胞を殺します。放射線療法の方法はがんの種類や大きさ、病期によって異なります。

化学療法(抗がん剤治療)化学療法は薬剤を用いてがん細胞をおさえる治療のことです。口から服用したり、静脈内に注射する化学療法では、薬剤が血液の流れに乗って全身のがん細胞に影響します。薬剤の種類や組み合わせはがんの種類や病期によって異なります。

化学放射線療法文字通り化学療法と放射線療法を組み合わせた治療法です。化学放射線療法の方法はがんの種類や病期によって異なります。

内視鏡治療(EMR:内視鏡的粘膜切除術; ESD:内視鏡的粘膜下層剥離術)食道壁の粘膜下層までにとどまる「表在型」のがんのうち、粘膜層にとどまりリンパ節転移のない食道がんを早期食道がんと呼びます。内視鏡治療は、この粘膜にとどまったがんを内視鏡(胃カメラ)で見ながら食道の内側から切り取る治療法です。切除したがんを顕微鏡で詳しく調べた結果、もし治療前の診断より深く拡がっていたりした場合、がんが食道の外側のリンパ節などに拡がっている(転移している)可能性があるため、追加の手術や放射線療法、化学放射線療法が必要になります。



病期(ステージ)別治療

 食道がんは非常に早期に発見された場合、治癒の可能性が高いです。しかし食道がんと診断された時に、すでに病気が進行した状態である場合があります。進行した病期では、食道がんに対して治療は行えますが、治癒する可能性は低くなります。

0期(上皮内がん)内視鏡治療
外科療法(手術)
化学放射線療法(放射線療法と抗がん剤の併用療法)
粘膜にとどまるがんでは、食道を温存できる内視鏡治療が可能です。がんの範囲が広いために内視鏡的に切除できない場合には、手術で切除します。

Ⅰ期外科療法(手術)
化学放射線療法(放射線療法と抗がん剤の併用療法)
化学放射線療法により、手術をせずに臓器を温存しつつ手術とほぼ同等の治癒率が得られるという報告もあります。化学放射線療法と外科療法の効果を比較検討する研究も行われておりますが、まだその結果ははっきりとはしておらず、現状での標準治療は手術です。

Ⅱ期・Ⅲ期外科療法(手術)
手術と化学療法または化学放射線療法の合併療法
化学放射線療法(放射線療法と抗がん剤の併用療法)
手術が標準治療です。治療前の検討で、手術によって完全にがん病巣をとり除くことができると判断され、体力(心臓や肺の機能、あるいは重い合併症の有無など)も手術に耐えうると判断された場合には手術が選択されます。再発・転移の防止のために手術前後に化学療法または化学放射線療法を行うこともあります。一方、治療前の検討で体力が手術に耐えられないと判断されたり、手術療法を希望されなかった場合には、化学放射線療法もしくは放射線療法のみが選択されます。

Ⅳ期化学療法
化学放射線療法(放射線療法と抗がん剤の併用療法)
放射線療法
痛みや他の苦痛に対する症状緩和を目的とした治療
通常、Ⅳ期では手術を行うことはなく、化学療法や化学放射線療法が行われます。明らかながんの縮小を認めることもありますが、すべてのがんを消失させることは困難です。高齢者や全身状態が不良な場合には化学療法ができないこともあり、その場合は放射線療法が行われます。

Ⅳ期ではがんによる症状を認めることが多く、痛みや呼吸困難などの症状を緩和するための治療が重要になります。症状緩和の治療技術はかなり進歩してきており、多くの症状を軽減することが可能となっています。


食道がん 名医11人

加藤抱一(特殊病棟部長) 国立がんセンター中央病院(東京都)
                   ℡03-3542-2511
内視鏡部、放射線科との連携で、縮小、合併治療などの選択も可


井上晴洋(第1外科) 東京医科歯科大学医学部付属病院(東京都)
                   ℡03-3813-6111
食道ガンに対する内視鏡下食道切除と再建術を併用しQOLに配慮


宇田川晴司(消化器外科部長) 虎ノ門病院(東京都)
                   ℡03-3588-1111
ガンの縮小治療・機能温存と根治性の両立を目指し、治療を個別化


吉田 操(食道外科部長) 都立駒込病院(東京都)
                   ℡03-3823-2101
他の医療機関からの難治患者も多く、根治手術で世界からも注目


大津 敦(5A病棟医長) 国立がんセンター東病院(千葉県)
                   ℡0471-33-1111
食道がんに対する放射線化学療法で非切除治療。根治手術と同等成績


落合武徳(第2外科教授) 千葉大学医学部付属病院(千葉県)
                   ℡043-222-7171
遺伝子治療も視野に入れた広範な臨床姿勢。根治手術と縮小手術も


幕内博康(消化器外科教授) 東海大学医学部付属病院(神奈川県)
                   ℡0463-93-1121
内視鏡下で身体的負担の少ない手術。早期ガンは100%社会復帰


田中乙雄
(外科部長) 新潟県立がんセンター新潟病院(新潟県)
                   ℡025-266-5111
縮小、拡大手術まで集学的治療を併用して良好な実績を収める


伊藤勝基(第2外科) 名古屋大学付属病院(愛知県)
                   ℡052-741-2111
腹腔鏡下の切除術に定評がある。術後の化学療法の導入にも積極的


中尾昭公(第2外科) 名古屋大学付属病院(愛知県)
                   ℡052-741-2111
内視鏡補助下における食道の切除、および再建術を強力に推進する


甲 利幸(第1外科医長) 大阪府立成人病センター(大阪府)
                   ℡06-6972-1181
進行ガンも含め、3段階の治療法で5年生存率46%は全国一の成績


食道がん治療・手術の最高の名医

大津敦国立がんセンター東病院
内視鏡部長 1983年東北大学医学部卒。いわき市立総合磐城共立病院等を経て現職。
食道がんに対する放射線化学療法など、化学療法の面に力を入れています。診療の際には、外科・化学・放射線療法の良い点、悪い点を患者にしっかり伝えています。


鶴丸昌彦順天堂大学医学部附属順天堂医院
食道・胃外科教授 1970年東京大学医学部卒。虎の門病院消化器外科等を経て現職。
外科医としてのセンスとバランス感覚に優れたドクターで、「患者は家族と同じ」という意識で診療にあたる食道がんの名医です。


幕内博康東海大学医学部附属病院
病院長・外科学主任教授 1970年慶應義塾大学医学部卒。国立がんセンター等を経て現職。
食道がんの名医として知られており、特に食道の内視鏡的粘膜切除では、わが国の第一人です。専門医に「食道がんになったら是非この人」と言わしめるほどの名医です。


大杉治司大阪市立大学医学部付属病院
第二外科助教授 1975年大阪市立大学医学部卒。英国マンチェスター大学研究員等を経て現職。
腹腔鏡手術の技術の応用により、低侵襲の食道がん根治術を可能にしており、患者の術後QOLの向上に大きく貢献しています。


金子和弘昭和大学病院
消化器内科 1989年昭和大学医学部卒。国立がんセンター中央病院等を経て現職。
食道がんの早期発見のため、電子内視鏡・超音波内視鏡を常備しており、早期発見率の向上により内視鏡治療が行えるよう対処しています。


塩崎均近畿大学医学部附属病院
病院長 1970年大阪大学医学部卒。西ドイツ・ハイデルベルク大学留学等を経て現職。
食道がんで入院する患者に対して、最も適する治療法を外科、放射線科、腫瘍内科の合同会議で検討し決定しています。


篠田雅幸愛知県がんセンター中央病院
胸部外科部食道外科診療科医長 1976年金沢大学医学部卒。愛知県がんセンター社会復帰部部長等を経て現職。
食道がんの外科治療の成績は、リンパ節転移ありの進行症例が75%を占めるにも拘らず、5年生存率で60%を超す高い実績を残しています。


藤田博正久留米大学病院
外科・食道グループ教授 1972年慶應義塾大学医学部卒。産業医科大学第二外科等を経て現職。
食道がんの進行度に応じて、通常開胸、小開胸、非開胸(腹腔鏡視下)の各種の治療法が可能です。レーザーを用いた光線力学療法にも力を入れています。


細川正夫恵佑会札幌病院
理事長・院長 1968年北海道大学医学部卒。国立がんセンター病院外科等を経て現職。
可能な限り機能を残すための努力をしており、頸部食道がんでは、摘出後に顕微鏡を使い、1~2ミリの血管を吻合して「遊離空腸移植術」で頸部食道を再建しています。


室圭国立がんセンター中央病院
消化器内科 1990年東北大学医学部卒。国立がんセンター東病院等を経て現職。
消化管がんの内科治療を専門としており、中でも食道がんの治療を数多く手がけています。化学放射線療法により食道の温存に努めています。


末期の食道がん

 人間の身体は約60兆個の細胞で出来ています。正常な細胞は、損傷を受けたときなどは、古くなれば死んで、新しい細胞を増やすためのスイッチが正常に働きますが、癌細胞はそのスイッチが入ったままになってしまうので、増え続けてしまいます。また、癌細胞はまわりの正常な組織に進入し、血管やリンパ管を通り身体の至る所で増殖します。

 癌の進行段階は、病巣の大きさなどや周囲の組織にどの位広がっているか、手術は出来るかどうかなどから診断します。癌の進行が進んで、他の臓器へ転移し、身体じゅうに広がった状態になり、手術などで治す事が出来なくなった状態を末期癌と呼びます。

 食道がんは、消化管や呼吸器粘膜などの臓器を作る上皮細胞から発生し、扁平上皮癌に分類され、他の臓器に転移しやすいのが特徴です。

 末期の食道がんは、激痛を伴い、肉体的にも精神的にも大きな痛みにさらされますので、治療方法と告知について考えることが重要です。

 末期の食道がんの症状は、出血や貧血、嘔吐、下痢、免疫機能の低下、激痛、食欲不振、はきけ、呼吸困難、不眠、便秘、口がかわくなどで、歩いたり話したりする事も困難になります。生還の確率も低く、闘病もつらく、本人も周りの人もとても苦しめられます。

 がんの原因は、発癌性のある化学物質や放射線、ウイルス感染などがありますが、近年、遺伝子の異常や細胞分裂の回数を決める過程の異常が関係している事がわかりました。癌に勝つには、このように進化していく医療と一緒に闘い、望みをもってあきらめない事が大切です。


末期の食道がんの治療

 末期の食道がんの治療方法には、医療機関と連携して行う在宅医療があります。この場合は、急変する可能性が高いので、前もって対処法を確認しておいて下さい。

 次に症状を和らげ、苦痛をとる事を目的とした緩和医療があります。次に治癒を目的とした根治治療があります。次に残された日々を安らかにすごしてもらう為に行うターミナルケア(終末医療)があります。

 しかし食道がんは、殆どのケースで根治治療としての外科手術が適応外になります。また化学療法も満足出来ないのが現状です。それを打開するのがNK細胞療法です。食道がんに対して有効である症例が報告されています。

 NK細胞療法には副作用が殆どないものや、免疫力を強化するものなどがあります。また抗がん剤で起こる耐性が起こらないのも特徴です。この治療は点滴で行う全身治療ですので、様々な効果を発揮する可能性があります。

 多くの癌は、早期なら治る可能性が高いですが、自覚症状があまりないので、末期の食道がんにならない為には、定期健診や癌を防ぐ事が重要になります。

 癌を防ぐ為には、毎日バランスのとれた栄養をとる事が大切です。その他にも、食生活に変化をつけたり、食べすぎに注意したり、脂肪は控えめにしたり、お酒はほどほどにしたり、ビタミンや繊維質を多くとったり、塩辛いものは少なくしたり、熱いものはさましたてから食べたり、焦げた部分は食べないようにしたり、かびの生えたものは食べないようにしたり、日光にあたりすぎないようにしたり、適度にスポーツをするようにしたり、体を清潔に保つようにして下さい。


食道がんの治療1

内視鏡治療

食道癌が粘膜にとどまっており・病変のひろがりが3-5cm以内であり・病変の個数が3-4個までである場合には、手術をしなくても内視鏡で病変を取り去り治療を行うことができます。1週間あまりの入院が必要となります。


術前化学療法
CT検査や超音波検査により、頚・胸・腹部のリンパ節がるいるいと腫れているような場合には、手術に先立ち抗癌剤治療を行うことがあります。


術後化学療法
手術で取り去ったリンパ節に癌が転移していたものが多かった方には、退院後外来で抗癌剤治療を行います。



食道がんの治療2

外科的治療

食道癌が粘膜をこえて粘膜下層より深くもぐり込んでいる場合には、原則的に手術が必要になります。手術は、食道の病巣の完全切除と癌が転移しているかもしれないリンパ節を十分な範囲取り去ることから成ります。

手術方法は食道癌の発生部位により異なり、頚部・胸部の上半分に病変がある場合には頚・胸骨(時には腹部も)を切開する手術を行います。胸部の下半分や腹部に病変がある場合には胸(右側の乳首の下あたりを肋骨に沿って横に切る)・腹部(時には頚部も)を切開する手術を行います。このように食道癌の手術は頚・胸・腹部におよぶ広範囲なものとなります。

また、食道を取り去った後には胃(すでに胃を手術しておられる方には小腸や結腸)を持ち上げ、食べ物が通る経路を再建します。これまでは持ち上げた胃を頚でつなぐことが多かったのですが、われわれの施設では胸の中の上の方で胃をつなぐことにより、手術後の良好な食事摂取を可能にしています。



食道がんの治療3

放射線・化学療法

食道癌が気管や大動脈へ直接浸潤しておりすぐには手術で取り去ることが難しい場合には、放射線と抗癌剤(化学療法)を組み合わせた治療を行います。治療に要する期間は4-6週間くらいとなります。その後は、手術を行う方と抗癌剤で維持療法を行う方に分かれます。

また、食道癌が粘膜もしくは粘膜下層にとどまっており・リンパ節転移もなさそうな方には、手術を行わず放射線と抗癌剤を組み合わせた治療も選択肢の1つとなります。

われわれの施設が国立がんセンターと協力して行った研究では、現在までのところ手術に劣らない成績が得られていますが、もう少し先でないと確定的なことは分かりません。

食道がんの治療成績

食道がんの治療成績は病期別にみますと次のようになっています。ここで示しています数字(%)は5年生存率を表わします。一人の方が5年間生きられる可能性です。食道がんの場合再発はほとんど2年以内です。


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食道がんとアルコール

食道がんの大きな原因のひとつに、アルコールが挙げられます。アルコールは、のどを痛める元でもあるのです。のどの粘膜がダメージを受け、細胞に過度の刺激を与えてしまいます。その細胞が、がん化するというワケ。昔から「酒は百薬の長」と言われているように、適度な飲酒は健康維持には有効的。


けれども、大量のアルコール摂取となると、話は別です。アルコールの摂り過ぎは、体に大きな負担を与えてしまうことに。また、アルコールの分解機能と食道がんも大きな関連があることが指摘されています。体の中でアルコールを分解するためには、「アルコール脱水素酵素」から、毒性の高い「アセトアルデヒド」へと一旦変化させます。


食道がんと遺伝

遺伝的な理由から、食道がんのリスクが高くなる場合もあります。家系的に、食道がんになりやすい方というワケです。現在、がんと遺伝の関係には、科学的な立証はありません。けれども、遺伝子が影響していることは事実であるという見方が強まっています。実際、家族や親族に食道がんを患った方がいるとしたら、他の家族にも発症することも多いのです。


やはり遺伝的因子があるのではないかと考えられます。食道がんを発症するには、様々な理由が挙げられます。諸々の生活習慣的な要素も関係が深いと言われています。けれども、まだ若い時期に食道がんを発症してしまう方もいることから考えると、遺伝的な要素も関係していると言わざるを得ません。


食道がんと日本人

食道がんを発症する日本人の多くは「扁平上皮がん」であると言われています。「扁平上皮がん」というのは、食道粘膜の表面にできるがんです。一方「腺がん」は、分泌液を出す腺細胞で発症するがんのこと。日本人の多くが「扁平上皮がん」患者であるということは、発症する食道がんの種類は人種によって異なるということなのでしょうか。


白人の方の場合、胃液が逆流することが多いため、食道の扁平上皮がダメージを受けやすくなっています。そこから、がんが発症するケースが多いのです。このように、罹患率は人種によって大きく偏りがあると言えるでしょう。食道粘膜の強度は、日本人に比べ、白人の方が強いと言われています。


食道がんとタバコ

世界中で知られるように、タバコは多くのがんを引き起こす原因のひとつとなっています。それは、食道がんだけではありません。特に、「咽頭がん」については、がん発症の最大の原因とも言われています。肺がんでも7割以上、食道がんでも約半数がタバコによって引き起こされているのです。ご存知のようにタバコには、「ニコチン」「タール」「一酸化炭素」など、多数の化学物質が含まれています。


分かっているだけでも、発がん性の成分は60種類も含まれているのです。中でも、特に問題視されいるのが「ニコチン」。ニコチンは中毒性が高く、悪玉コレステロールを増加させる働きがあります。「心筋梗塞」などの重篤な疾病を引き起こすことも。タバコは食道がんにも大きな影響を与えます。タバコによって、のどの粘膜が刺激を受け、細胞ががん化し、食道がんになってしまうことも。


食道がんの各種治療

食道がん患者さんに対して各種治療法があります。食道がん患者さんに対して各種治療法が適用されます。標準的治療法(現在用いられている治療法)もあれば、臨床試験において検証されているものもあります。治療法についての臨床試験は、現在行われている治療法の改善やがん患者さんの新しい治療法に対する情報を得るために行われるものです。現時点で標準的とされている治療法よりも新しい治療法の方が良いと示された場合、今度は新しい治療法が標準的治療法になる可能性があります。 
臨床試験に参加してみてはどうかと考えてみるのもよいでしょう。いくつかの臨床試験は治療を始めていない患者さんにのみ開かれています。 食道がんの治療中に患者さんに対して特別な栄養管理が必要です。多くの食道がん患者さんは、嚥下困難のため食べることが難しくなっています。

食道は腫瘍により、または治療の副作用のため狭くなっていることがあります。患者さんは静脈から直接栄養素を補給されることもあります。また自力で食べることができるようになるまで、フィーディングチューブ(鼻または口から胃まで通す柔軟性のあるプラスチックチューブ)を必要とすることもあります。

標準的治療法として以下の5種類が用いられます:

外科的療法手術
は食道がんに対する最も一般的な治療法です。食道の一部は食道切除術と呼ばれる手術で摘出されることもあります。患者さんが以前のように飲食物を飲み込むことができるように、医師は残っている食道の健常な部分を胃につなぎます。プラスチックチューブや腸の一部を利用してつなぐこともあります。

食道周囲のリンパ節を取り除き、顕微鏡検査でがんがあるかどうかを調べます。一部の食道が腫瘍により閉塞されている場合は、食道を拡張させておくために食道内に拡張可能な金属ステント(チューブ)を留置することもあります。 放射線療法放射線療法は高エネルギーX線やその他の種類の放射線を用いてがん細胞を殺すか、成長させないでおくがん治療のことです。

放射線療法には2つのタイプがあります。体外照射は体外の機械を用いてがんに放射線を照射する治療法です。体内照射は放射性物質を密封した針、シーズ、ワイヤ、カテーテルをがんの内部またはその近くに直接留置して、がんに放射線を照射する治療法です。放射線療法の方法はがんの種類や病期によって異なります。

放射線療法中に食道を拡張させておくためにプラスチックチューブを食道内に挿入することがあります。これは食道挿管拡張術と呼ばれます。

化学療法化学療法
は、薬剤を用いてがん細胞を殺すかまたは細胞分裂を停止させることでがん細胞の増殖を停止させるがん治療のことです。
口から服用したり、筋肉や静脈内に注入する化学療法では、薬剤は血流を通って全身のがん細胞に影響します(全身療法)。脳脊髄液、臓器、腹部などの体腔に薬剤を直接注入する化学療法では、薬剤は主にこれらの領域中にあるがん細胞に影響します(局所化学療法)。化学療法はがんの種類や病期によって異なります。

レーザー療法レーザー療法は、レーザー光線(強い光の細い光線)を用いてがん細胞を殺す方法です。 電気凝固療法電気凝固療法は電流を用いてがん細胞を殺す方法です。 新しい治療法は現在、臨床試験で有効性を検討中です。現在アメリカで実施されている臨床試験についての情報はインターネットでNCI Web siteにアクセスすれば、入手できます。

臨床試験に参加したいと考える患者さんがいるかもしれません。何人かの患者さんにおいて臨床試験に参加することは最良の治療選択であるかもしれません。臨床試験はがんの研究過程の一つです。臨床試験は新たな治療法が標準的な治療法より安全で有効であるかを見つけ出すために行います。

がんに対する今日の標準的な治療法の多くは早期の臨床試験を基本にしています。臨床試験に参加する患者さんは標準的な治療を受けるか、初めて新しい治療を受けることになるかもしれません。

また、臨床試験に参加する患者さんは未来のがん治療法の改良を助けます。新しい治療法の臨床試験が有効性を示さなくても、しばしば重要な疑問の答えとなり、研究が前進するのを助けます。 がんの治療を始める前、または始めるか、治療を始めた後に患者さんは臨床試験に参加することができます。

いくつかの臨床試験はまだ治療を受けていない患者さんを含んでいます。他の試験はがんが回復していない患者さんに対する治療を評価します。がんが再発する(再起する)のを止めるか、がん治療の副作用を軽減する新しい方法を評価する臨床試験もあります。

臨床試験は国の多くの地域で行われています。治療法の項での現在の治療法の臨床試験へのリンクを参照してください。NCIの臨床試験リストから取り出してきます。

フォローアップ検査が必要になるかもしれません。 がんを診断するために行われた、あるいはがんの病期をみつけるために行われた検査が繰り返されるかもしれません。いくつかの検査は治療がどれぐらいよく効いているかをみるために行われるでしょう。治療を続ける、変更するか止めるかどうかの判断がこれらの検査結果を基に行われるかもしれません。これらはときどき再病期診断と呼ばれます。

いくつかの検査は治療が終わった後に時々継続して行われるでしょう。これらの検査結果は状態が変化したかどうか、またはがんが再発(再起)したかを示すことができます。これらの検査は時々、フォローアップ検査か定期検査と呼ばれます。



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現在行われている臨床試験のリストへのリンクはそれぞれの治療の項目に含まれています。いくつかのがんのタイプや病期に対しては、試験がないかもしれません。リストに載っていない臨床試験をあなたの主治医とチェックすることは、あなたにとって正しいかもしれません。0期(上皮内がん)0期の治療には通常手術が行われます。

現在、米国で0期食道がんの患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのがん臨床試験リストから確認してください。 試験の場所、治療の種類、薬剤名など研究の他の特徴から研究を詳細に知ることが出来ます。臨床試験に関する一般的情報はNCI Web siteから入手可能です。 I期食道がんI期食道がんの治療法には以下のようなものがあります。
手術。
臨床試験。
現在、米国でI期食道がんの患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのがん臨床試験リストから確認してください。 試験の場所、治療の種類、薬剤名など研究の他の特徴から研究を詳細に知ることが出来ます。臨床試験に関する一般的情報はNCI Web siteから入手可能です。 II期食道がんII期食道がんの治療法は次のいずれかになると思われます:
手術。
化学放射線療法(化学療法と放射線療法を併用した治療法)
手術後に行う化学放射線療法の臨床試験
現在、米国でⅡ期食道がんの患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのがん臨床試験リストから確認してください。 試験の場所、治療の種類、薬剤名など研究の他の特徴から研究を詳細に知ることが出来ます。臨床試験に関する一般的情報はNCI Web siteから入手可能です。 III期食道がんIII期食道がんの治療法は次のいずれかになると思われます:
手術。
化学放射線療法(化学療法と放射線療法を併用した治療法)
手術後に行う化学放射線療法の臨床試験
現在、米国でⅢ期食道がんの患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのがん臨床試験リストから確認してください。 試験の場所、治療の種類、薬剤名など研究の他の特徴から研究を詳細に知ることが出来ます。臨床試験に関する一般的情報はNCI Web siteから入手可能です。 IV期食道がんIV期食道がんの治療法は次のいずれかになると思われます:
症状を軽減し、QOLを改善するための緩和療法として食道ステント
症状を軽減し、QOLを改善するための緩和療法として外照射または腔内照射療法。
症状を軽減し、QOLを改善するための緩和療法としてレーザー手術または電気凝固療法。
化学療法。
化学療法の臨床試験。
現在、米国でⅣ期食道がんの患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのがん臨床試験リストから確認してください。 試験の場所、治療の種類、薬剤名など研究の他の特徴から研究を詳細に知ることが出来ます。臨床試験に関する一般的情報はNCI Web siteから入手可能です。 再発性食道がんに対する治療法再発性食道がんの治療法は次のいずれかになると思われます:
症状を軽減し、QOLを改善するための緩和療法としていずれかの標準的治療法の使用。
臨床試験
現在、米国で再発性食道がんの患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのがん臨床試験リストから確認してください。 試験の場所、治療の種類、薬剤名など研究の他の特徴から研究を詳細に知ることが出来ます。臨床試験に関する一般的情報はNCI Web siteから入手可能です。

食道がんの手術後

食道癌の手術では肺へ行く神経を切断することが多く、そのため術後に痰がたくさんでてそのため肺炎になる人が多かったのですが、最近では術後に気管支鏡を用いて呼吸管理をするなどの管理方法が向上し、成績が向上してきました。しかし、術直後はかなり綿密な管理が必要でそのためICU(集中治療室)を使うばあいが多いです。

もちろんICUなしでやっている施設もあります。本人も診断がついたら(もし吸っていれば)たばこをやめ、手術が決まって入院後は、できれば器具を使ったり、運動をして肺機能を高め、術後しっかり咳をして痰を自ら出すための訓練をしておく必要があります。

いずれにしろ術直後は人工呼吸器が使われることが大多数です。また自分で呼吸できるようになっても、痰をとるための細い管を気管に入れたり、気管切開が必要になる患者さんもあります。このようなことを術前によく説明しておいてもらうことが大事です。

術後数日で食道の代わりのものと食道の残りや、咽頭をつないだ場所がほころびることがあり、つばや食事がもれるのでこれが最もやっかいな合併症です。たいていは管をいれたり、傷をすこし開いたりして対処可能ですが、重症となることもあります。

食事ができるようになるまでは2週間ほどかかります。
食事は一度にたくさん食べれないので、自分の食事の仕方を修得する必要があります

退院は術後の治療がなければ術後3週間ー1ヶ月ぐらいから可能となります

術後の発熱が続き、本人の状態もよくない場合は、術後の肺炎または縫い目のほころびによる感染が疑われ、多くは集中治療室での管理が必要です。

人工呼吸、気管切開、気管支鏡による痰の吸引がされることが多いです。敗血症や、ARDS(呼吸状態が悪いこと)の状態であると、生命の危険があり、強心剤を始めとする多くの薬が投与されることが多いです。

このような状態ですと、家族も大変心配ですが、本人の状況について毎日詳しく説明を求めて、状況をよく把握するべきでしょう。このような状態にならないため、またなっても対処が迅速に行われるということで、ある程度症例の多い病院を選ぶべき疾患だといえます。


食道がんが進行し、手術ができない形で発見されたら

遠隔転移等があり、手術が適していない場合、選択肢としては、
1.化学療法あるいは放射線療法をするか、
2.癌に対する治療はせず、痛みなど症状をとる治療のみ行うかです。

一般的にいって、手術ができないような食道癌のばあいは、化学療法によって腫瘍が治癒したり、大きく寿命が延びることはまれだと考えられます。ただし、食事がまったく通らないばあいは、何らかの処置(バイパス手術やステントチューブの挿入等)をする方が、余命を楽にすごせますし、骨の痛みなどは放射線療法で一時的に症状が軽くなることがあり、個々の場合に応じて判断が必要です。

手術も含めて治療は必ず何らかのマイナス面をもっています。手術では痛みがありますし、化学療法では、(一時的ですが)吐気、おう吐、脱毛、白血球減少などがあり、いずれも生命の危険性も数%あります。根治の可能性がない場合、その治療でもし半年寿命が延びるとしても、そのため1ヶ月入院し、ある程度の痛み、苦しみを伴う治療をうける価値があるかどうか、自らの価値観にてらして考えるべきでしょう。

手術が適していない食道癌の場合は、多くは診断後の余命は半年から1年ぐらいで、場合により2年以上にわたることもあります。一般的には現在症状がなくても半年ぐらいの間には何らかの症状の出現があり、1年後には状態が悪化する可能性が高いので、良好な社会生活ができるのは普通は半年から一年ぐらいでしょう。

なおらないだろう、と判断されれば、気持ちを切り替えて、残された社会生活を有意義に過ごすことに方向転換をすることが、この腫瘍に対するよりよい対処方法だと思います。

なぜ自分がこのような目に、と反問することもあるでしょう。家族に、自分につらくあたってしまうこともあるでしょう。しかしこの問いに対する答えはないのです。自分と家族がこれからいっしょに過ごせる時間が有意義なものになるように努力しましょう。自分が苦しいのだからと、家族に苦しみを転嫁しても楽になるものではありません。今の自分があるのは家族のおかげです。これまで自分をささえてくれた家族に対する感謝の気持ちが大切です。

痛み等が出現すると冷静ではいられませんが、モルヒネなどの麻薬を用い、痛みのない状態で最後を迎えることができるように医学も進歩してきています。またそのための専門病院もありますので手術が適さないと判断された時点で将来のことを考えて判断してください。

漢方や民間療法、温熱療法、遺伝子療法、免疫療法では現在のところ癌を治癒させることは難しいです。新しい治療法の中では血管新生抑制療法が癌をコントロールする(治癒はしないが―これを tumor dormancyとよんでいます)可能性があり、私は個人的には期待しています。免疫療法の一部にはこのような血管新生抑制を介しての効果を持っているものがあると考えられます。これら新しい治療法が確立するにはまだ時間が必要です。



病名告知について ―家族へのアドバイス

多くの場合、病名を告げるほうがよいでしょう。うそをつかなくてすみますし、医療側と患者さん、また家族と患者さんの関係がスムースになります。また患者さんが治療を受け入れるのが容易になります。悪性腫瘍であることを告げずに、手術あるいは副作用のある化学療法が必要であることを納得させるのは大変です。

病名を告げないのは、患者さん本人が病名を知りたくないという希望をもっているときなどに限った方がよいでしょう。家族の方の判断で、この人は癌だとわかると落ち込むに違いないからというので病名に関してうそを言うのは本人の希望を無視することにもなりますし、その後の家族関係を悪化させる原因にもなりえます。診断がつく前に、癌だったら知らせて欲しいかどうか、それとなく聞いておくのもよいでしょう。自分で判断のできる人であれば、自分の病気を知りたいと思うのが普通です。自分の場合を考えるとそうでしょう。自分は知りたいけど、家族の癌は本人に知らせたくないという人が多いのです。基本的には本人の意思を尊重することです。



食道がんの初期症状

食道がんは、女性の5倍の確立で男性が発症するがんで、全てのがんの中で3.4%を占める発症率の高いがんです。

胃がんや肺がんに比べて情報量は少ないですが、初期症状が現れてから1年以内に死亡してしまうことが多く、5年生存率は5%と大変低いことで知られています。

原因としては、やはりお酒やタバコ。
さらに、刺激物を好む人が発症することが多いといわれています。

また、熱い食べ物や飲み物を冷まさずに飲み込むと、食道がダメージを受け、食道がんのリスクが高まります。

死亡率がとても高い「食道がん」ですが、初期症状はほとんどなく、無症状食道がんは実に20%。
そのため、早期発見がとても困難です。
なんとなく胸がつかえたり、胸がしみる感じや大きめの固形物が飲み込みにくくなるという症状が現れますが、
50代~60代で発症することが多いため、年齢のせいで喉がつかえているのだと捉えて放置してしまう人がほとんど。
さらに、がんが進行するにつれてこれらの喉の違和感は消えてしまうことが多く、がんがそのままどんどんと進行してしまう原因となっています。
また、胃に不快感を覚える人が、内視鏡検査を受けて偶然「食道がん」が発見されるということも少なくないようです。

食道がんのかすかな初期症状として覚えておきたいのが、食べ物が落ちていく感覚。
熱いものを食べたときなどに、喉からお腹にかけてつーっと落ちていく感じを経験したことがある人は、多いのではないでしょうか。
食道の感覚は敏感で比較的正確なため、異物があると、物が通っていくときに異変が感じられます。
熱いものを食べたわけでもないのに、食べ物が通っていく感じを覚えたときは、「食道がん」の初期症状を疑いましょう。

がんが進行すると、食道の内側に向かって腫瘍が盛り上がるので、食べ物が喉や胸で詰まる感覚が強くなります。

また、食事に影響を及ぼしてくるため、体重の減少も症例の一つに挙げられます。
ただし、こういった症状を自覚する頃には、がんは相当進行してしまっているものと考えてください。

「食道がん」はとても進行の早く、さらには転移するのも早いがんなので、違和感を覚えた時点で早々に医療機関を受診するべきです。

40代後半から増加するという統計があるので、何も兆候がなくても、40代を過ぎたら人間ドッグや定期健診を受けるようにするのが、早期発見さらには、完治へと繋がる方法です。





がんとアセトアルデヒド

アセトアルデヒドは、飲酒後に体内でエタノールの中間代謝物として生成されます。悪酔いや二日酔いの原因となります。また、アセトアルデヒドには発がん性があり膵臓がん、口腔がん、食道がん、咽頭がん、大腸がんなどの発症が高くなるそうです。

アセトアルデヒドは添加物としてタバコ製造会社によってタバコにも添加されているようです。添加する理由は、アンモニアと同様にニコチンの吸収・効果の増幅作用があり、より少量のニコチンで依存性を発揮させたり、燃焼を促進させたりするようです。

口の中をきれいにすると、アセトアルデヒドは低くなります。歯磨きやうがいはもちろんのこと、デンタルフロス、歯肉ブラシなども使って口腔内を清潔に保ちましょう。



飲酒と食道がんの関連 世界的には確実

アルコール飲料が食道がんのリスクであることは、世界中から報告されています。国際がん研究機構(IARC)における評価では、アルコール飲料はヒトに対し発がん性があると結論づけられており、部位別には口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓、大腸、乳がんのリスク要因とされています。また、世界がん研究基金と米国がん研究協会(WCRF/AICR)が共同で発表している「がん予防のための食物・栄養などに関する勧告」の第二版(2007)でも、アルコールは食道がんの確実なリスク要因であると判定されています。

日本では、よく飲まれる酒の種類が欧米と異なること、日本人に多い食道がんのタイプ(扁平上皮がん)が欧米に多いタイプ(腺がん)と異なること、アルコールを飲んですぐ顔が赤くなるタイプの人が約半数いるという体質の違いがあることから、必ずしも欧米の結果が参考になるとは限りません。

今回、改めて、2010年1月までに報告された飲酒と食道がんリスクについて、日本人を対象とした疫学研究結果をまとめ、評価しました。このテーマについて報告された疫学研究には、4つのコホート研究と9つの症例対照研究がありました。それらを検討した結果、日本では、飲酒と食道がんリスクの関連を示す科学的根拠は確実であるという結論になりました。



逆流性食道炎とは

逆流性食道炎の症状◇ 口の中に酸っぱい物が上がってくる
◇ 胸焼けがする
◇ 寝ているときや前かがみになったときに喉や口に胃酸が逆流する
◇ 喉の痛みや違和感、又は不快感がある
◇ 肋間神経痛のような胸痛がする
◇ 耳痛、耳の違和感がある
◇ 甘いものが食べられなくなった

多くは過度のおくび(げっぷ)を伴い、食道が狭くなって食物が通りにくくなるなど、重度の場合は、出血を伴い貧血を引き起こすこともあります。

かがんだ時や食べすぎた後、あるいは就寝後や起床時に不快感が強い人が多く、また、胃液は起きている時よりも、就寝時の14時頃に分泌が多く出る事と、横になっている姿勢のほうが逆流しやすいために、就寝中に食道に炎症が起き、朝起きた時から胸焼けを感じることが多くなります。


逆流性食道炎とは逆流性食道炎は、胃液(1日2リットル分泌)が逆流しないように閉まっているはずの噴門(胃と食道の境目)が、何らかの原因で開いたために、胃液が食道に逆流するために起こる食道の炎症です。

良く似た症状で、普段から胃酸過多の人で、便秘が続いた時などに胃液が逆流することがありますが、この様に炎症や潰瘍が無くても胃液が逆流する症状もあります。

胃液中の胃酸は酸性度が非常に高いので、胃壁は粘液を分泌して胃酸を防御していますが、食道にはそうした働きがないことから、胃液が逆流すると粘膜が傷ついてしまい、食後に起きる胸焼けや、のどまで上がった胃液で、食道につかえ感や、焼ける感じ、チリチリした胸の痛み、げっぷが多くなるなどが一般的な症状です。

逆流性食道炎でも軽度の場合、又は、高齢者で自覚症状がほとんどないこともあります。

炎症が強いと潰瘍(かいよう)が生じて、出血や狭窄(せまくなること)の原因になり、欧米では以前から多い病気で日本では少ないと言われていましたが、高齢者の増加・食事の欧米化・診断の進歩により、日本でも大変多くの人が、時々逆流性食道炎を起こしていると言われていることが分かってきました。

最近は、症状はあるのに炎症が見られない、非びらん性の逆流性食道炎が多く見られるようになり、、胃も加え胃食道逆流症という考えが多くなっています。

こうした逆流性食道炎は、高齢者に多く見られ、また、男性よりも女性に多いという特徴があります。


逆流性食道炎原因

胃液の逆流は、食道から胃への入り口部分が老化などによって緩むことが原因と言われていますが、その誘引は。

◇ 姿勢が前かがみの状態でいる事が多い
◇ ストレス
◇ 過飲過食、飲酒による胃酸過多
◇ 食後すぐに横になる、前屈するなど
◇ 加齢による機能低下
◇ 食道裂孔ヘルニア
◇ 食道の機能低下
◇ 妊娠、肥満、便秘による腹圧の上昇
◇ 腹圧を高める運動や衣服の着用
◇ 本数の多い喫煙
◇ 刺激の強い食品の多食(コーヒ、カラシ、栄養剤のビタミンC)

原因がはっきりしている場合を除いては、ストレスによって発症する例が大部分を占めるため、精神科的治療を平行して行う長期間の治療になることもあります


逆流性食道炎の対処法

逆流性食道炎と言われたら、胸焼けなどの自覚症状の強弱に関係なく、普段の生活習慣(飲みすぎ、食べすぎ、早食い、食後すぐに横になる、辛い物好き)が、カッコ内で当てはまる習慣があったら止めましょう。
まずは、生活態度を改めることが基本です。

特に、冷えた飲み物を止め、のどが渇いたらお湯やお茶にする、これで、かなり症状は軽減します。長生きだったきんさん、ぎんさんは、水を飲まずにお湯をのんでいたそうです。

胸焼けを起こしやすい食品を出来るだけ減らす。


揚げ物

脂肪の多い物

熱い物

塩分の多い物

甘味料を多く含む物

酸性の強い物(肉類など)

刺激性の強い物 (コーヒー、唐辛子、カレー、オレンジジュース、ペパー ミント濃い緑茶、炭酸飲料等)

ビールに枝豆は、胃酸の分泌が多くなるので控えた方が良いです。


その他
1、寝るときの姿勢で軽減する。
頭部が10-20cm程度高くなるようにする。 横向きに寝る場合は、左右逆流
しにくい方を調べ、自分に合った方を下 にして寝る。
3、肥満解消に努める。
4、腹圧を上げないようにする。(重いものを持たない、前屈みを避ける、 
ベルトを強く締めない、排便の時、力まない)
5、運動や食物繊維の多い食事を心がける。
6、食べた後、最低30分は横にならない。出来れば2時間は起きておく。
7、薬を飲む時は、水を一緒にたくさん飲む。
8、牛乳(温めて)、卵、大根、山芋、キャベツ、豆腐は逆流性食道炎に
  良いので積極  的に摂る。
9、食後にガムを噛むのは有効。(唾液が弱アルカリ性なので胃酸を中和
  して症状を緩和する)
10、一時的には、牛乳やお湯を飲めば症状が和らぐ。

11、逆流性食道炎は、猫背の人に多いので姿勢に気をつける。



増加する日本人の逆流性食道炎

逆流性食道炎にかかる日本人は、年々増加傾向にあります。

主な原因としてあげられるのが、食生活の欧米化です。

戦前戦後の日本の主食は、魚や野菜などの比較的脂肪分の少ない食べ物がほとんどでした。しかし年が経過するにつれ、日本人の食生活は欧米化しています。

欧米の食事には脂肪分が多く含まれていることはご存知の通りです。脂肪分を多く摂取すると、胃酸が過剰に分泌されます。そのため、胃酸が逆流しやすい状態になってしまうのです。

逆流性食道炎は、胃酸が食道に長く滞留することにより引き起こされます。もともと日本人には少ない病気でしたが、食生活の欧米化により一気に増加しているのが現状です。

また、食生活の欧米化にともない、日本人の体型にも変化が表れています。脂肪分を多く含む欧米食を食べることで、肥満症状の方が増えているのです。

肥満になると、腹部に溜まった脂肪が胃を圧迫し、胃酸を押し出そうとしてしまいます。押し出された胃酸は、食道に行き場を求め、結果として逆流性食道炎を引き起こしてしまうのです。

日本人の逆流性食道炎の原因には、姿勢の悪さにもあるといわれています。
具体的にいうと、猫背です。

背中が曲がった状態では、腹部が圧迫され続けることになります。肥満の場合と同じように、胃が圧迫されて胃酸を押し出してしまうために逆流性食道炎にかかりやすいのです。

げっぷや胸焼けの症状が続いたら、まずは医者に診断してもらうようにしましょう。



逆流性食道炎が悪化すると

逆流性食道炎は、胃酸が逆流して食道内に長時間とどまることにより、炎症を引き起こしてしまう病気です。

胸焼けやつかえ、げっぷなどの症状が表れますが、少しでもおかしいと感じたら、なるべく早く医者の診察を受けるように心がけてください。

逆流性食道炎では症状の進行度合いによって、5段階に分けられています。

レベル1:逆流性食道炎のなかでも最も症状が軽く、油を多用した食事をとると胃に不快感を感じつ程度です。
レベル2:油の多い食事をとった後に、強い俯瞰間を感じます。
レベル3:油多い少ないに関わらず、胃に強い不快感が表れます。
レベル4:胃の強い不快感に加え、体を横にするとせきがでます。
レベル5:座ったままでもせきが続きます。

そのまま放っておくと、逆流性食道炎は確実に悪化します。

食道に胃酸が滞留し続けたままだと、食道の粘膜は胃酸に耐えるために、胃の粘膜と同じ形状に変化します。これは食道がんの一種であるバレット腺がんと呼ばれ、命に関わる病気として知られています。そうなる前に早急に医者の診察を受けたほうが良いでしょう。

また、一度逆流性食道炎にかかってしまうと、再発の可能性が非常に高くなるといわれています。

逆流性食道炎の原因には、生活習慣や食事が大きく関係していますので、予防のためにも生活習慣と食事を見直すことをおすすめします。肥満の方は、ダイエットをして体重を減らす努力をしておくと良いでしょう。



逆流性食道炎と年齢の関係

逆流性食道炎は、胃の中にある胃酸が食道に逆流してそこに留まるために食道粘膜が炎症を起こす病気です。

健康な人は、胃と食道の境目にある筋肉の働きのおかげで胃の中にある消化途中の食べ物が逆流することがありません。ところが、この筋肉が弱くなると胃酸が逆流してしまいます。げっぷや胃もたれが起きやすいので年寄りに多い病気のイメージを持たれがちです。実際に、年齢的に筋肉が弱って来た高齢者の方が若い人より発生しやすい病気です。しかし、最近では若い人でも逆流性食道炎にかかる人が増えており、年齢と病気の相関性が崩れています。

原因の一つに挙げられるのが栄養バランスを考えない食生活です。脂肪分の多いおかずや甘いものが好きな人、暴飲暴食や過度のアルコール摂取などの習慣がある人は、年齢に関係なく逆流性食道炎を発症しやすくなります。

生活習慣が逆流性食道炎を招いている場合もあります。食べてすぐ横になる癖がある人や、日頃から腹部を圧迫する姿勢を長く取る生活を続けている人は逆流性食道炎にかかりやすくなります。

ストレスも逆流性食道炎の原因の一つです。強いストレスを受け続けると自律神経が乱れます。その結果、胃酸の分泌や胃の働きが衰えて逆流性食道炎を発症します。

このように、胃液が逆流するのは年寄りの病気と思われていたのは過去の話。逆流性食道炎は、現代人にとって若年齢から発症するリスクのある病気なのです。男性に多いイメージのある病気ですが、肥満や妊娠などが原因となって女性で発症する人も少なくありません。

胃の調子が悪いのを見過ごしているうちに症状が進み、いざ治療を受けようとするとすでに症状が悪化している場合が多いのもこの病気の特徴です。逆流性食道炎かもしれないと思ったら早めに適切な治療を受けることが大切です。



逆流性食道炎と肥満

逆流性食道炎は、肥満体形の人に多いのが特徴の病気です。
肥満体形の人は、もともと大食で高カロリーや油っこい食べ物を好み過食状態に陥りがちです。過食になると胃酸過多となって、胃酸が食道に向かって逆流しやすくなってしまいます。

肥満の人はお腹回りに脂肪が付いているので、脂肪が胃を圧迫する状態が日中続きます。そのため、一日中胃酸の逆流が起きやすい環境が起きているのです。

お腹がぽっこり出ているメタボ体型の人は、ウェストのくびれがないのでベルトを締めないとズボンがずり下がってしまいます。
そのため、ベルトをきつく締めて胃酸が胃から腸へ流れにくくなり食道に逆流する環境を作り出していることがあります。肥満体形の人がベルトを締める習慣をやめることで症状が緩和することがあります。

日本人に多い2型糖尿病の原因は、運動不足による肥満や内臓脂肪の増加だと言われています。糖尿病の人は、神経障害によって食道の蠕動運動が低下するため逆流性食道炎の症状が悪化することがあるので気を付けなければいけません。
それと同時に、神経障害の症状の一つとして逆流性食道炎の自覚症状が現れにくくなります。

逆流性食道炎の治療は、まず適切な薬を服用して胃酸の分泌を抑えることで症状の緩和を試みます。
しかし肥満の人は、もともと逆流性食道炎になりやすいリスクを抱えているわけですから、薬だけに頼らずに、食事や生活の管理を行って病気の完治を目指しましょう。



逆流性食道炎 控えたほうがよい食べ物

逆流性食道炎は、胃酸が胃から食道に逆流して食道の粘膜が炎症を起こす病気です。逆流性食道炎を治す上で食べ物の見直しが欠かせません。

逆流性食道炎の人が控えた方が良い食べ物は、脂肪分の多い食材や油をたくさん使った料理です。油分の多い食事は、胃で消化するのに時間がかかるので胃にかける負担が多くなるからです。

過度の飲酒も禁物です。
アルコールには、道下部括約筋の機能を低下させる働きがあります。そのため、食道の入り口が緩くなって胃酸が逆流しやすい環境を作ってしまいます。

炭酸飲料は、健康な人でもゲップが出やすい飲み物です。
胃酸の逆流を起こしやすいので控えた方が良いでしょう。

刺激の強い香辛料を使った料理は、胸やけを起こしやすいので控えた方が良いでしょう。

甘いお菓子やカフェインも悪い影響を与えます。コーヒーや紅茶、緑茶などの飲みすぎや甘味料の摂り過ぎは禁物です。

逆流性食道炎の人が進んで摂った方が良い食材は、消化しやすく胃に優しい食べ物です。糖分や脂肪分、香辛料による刺激などが少ない食べ物が好ましいと言われ、豆腐や鳥のササミ、白身魚、バナナ、りんごなどがお勧めです。主食の米は、おかゆ・雑炊で摂る方が消化しやすくなります。

逆流性食道炎は、肥満体質の人に多く見られる病気です。
胃に優しいとされる食事をしても、暴飲暴食を繰り返していては症状の改善は見込めません。
逆流性食道炎に良いとされる食べ物を適量摂ることが症状改善につながります。



逆流性食道炎 早食いと大食い

早食い早食い癖がある人は逆流性食道炎になりやすいので注意が必要です。
食事の時には誰でも食べ物と一緒に空気を飲み込みます。早食いの人は、良く噛まないで飲み込むのでとりわけ大量の空気を食べ物と一緒に呑み込んでいるのです。

飲みこんだ空気はそのまま食道から胃に向かって咀嚼(そしゃく)した食べ物と一緒に降りていきます。すると風船が空気で膨れるように、胃が空気によって胃の内圧が上がります。空気を抜くために、空気の一部はゲップになって体外に出ていきます。

ゲップをする時は、普段閉じられている食道の下にある「下部食道括約筋」が緩みます。しかし、しょっちゅうゲップをする癖がつくとこの筋肉に締まりがなくなって開きっぱなしになってしまいます。すると、胃酸が食道に逆流しやすくなって逆流性食道炎を発症します。

大食い大食いも逆流性食道炎の大敵です。
大食いの人は摂取カロリーが活動に必要なエネルギーを上回っていることが多いので肥満体形になりがちです。腹が出ていると胃の蠕動運動が弱まって、食べ物や胃液が胃の中に滞留しがちになるので胃酸が食道に逆流しやすい環境になります。

もちろん大量の食べ物を食べるということは、それだけたくさんの空気を飲みこんでいるのでゲップも増えて早食いの人と同じ理由で逆流性食道炎を発症しやすくなります。

早食いの食べる癖がある人は、食べ物を良く噛む習慣を身につけることが大切です。大食漢の人は、毎日の食事内容を記録するなどしてカロリーコントロールに努めましょう。



逆流性食道炎とストレス

ストレスはが健康全般に悪影響を及ぼすことは有名で、逆流性食道炎の原因の一つにも挙げられています。

強いストレスが胃けいれんが起きたり胃潰瘍になることがあるというのは皆さんも聞いたことがあるでしょう。

ストレスを受けると血管が収縮して体中の血流が悪くなります。
その結果、胃の内壁も縮こまって動きが悪くなります。

一方、ストレスを受けたことによって自律神経のコントロールに乱れが生じるため、胃酸の分泌は増えてしまいます。

胃の運動は衰える一方で胃酸の量は増加するので食道の方へ逆流しやすくなります。

胃酸が胃の中に留まったままでいると胃けいれんや胃潰瘍を発症します。

逆流性食道炎の治療は、日本では服薬が中心となります。
しかし、症状が収まったからといって薬の服用をやめると再び症状が現れることが多く、薬だけに頼らずに生活習慣の見直しをするのが最善の治療です。
ストレスが原因と考えられる逆流性食道炎を発症した場合は、日常生活を見直してできるだけストレスを取り除く工夫をすることが必要です。

しかし、ストレス解消といって大量に飲酒したり深夜に暴食するような生活態度はかえって逆流性食道炎の症状を悪化させます。
ストレスが溜まって疲れたからといって家で食事をしたあとすぐに横になるのも逆流性食道炎の症状が起こりやすくなります。

ウォーキングや軽いジョギングなどの軽い有酸素運動はストレス解消に最適です。できれば休日には何かスポーツをすることを習慣にするといいです。

逆流性食道炎 控えた方が良い運動

逆流性食道炎の人が控えた方が良い運動があります。
運動の内容によっては、胃液が食道に逆流して症状が悪化する場合があるからです。

避けた方が良い運動は、重い負荷をかけた筋力トレーニングと背中を丸めて行うスポーツです。
いずれも腹圧が急激に上昇する恐れがあるので、その結果胃酸が逆流して不快症状が現れる恐れがあるからです。

ベルトや帯でお腹を締めつけて行うスポーツも逆流性食道炎を悪化させる原因となります。
体全体を締めつけるようなボディスーツやウェットスーツを着て行うスポーツも避けた方が良いでしょう。

しかし、適度なスポーツは流性食道炎の症状の改善に役立ちます。
スポーツをするとストレスを発散させることができますが、ストレスこそが最近逆流性食道炎が激増している主な原因の一つと言われているからです。

さらに、スポーツをすると腸の蠕動運動が活発になるので胃液が逆流せずに十二指腸から小腸へと正しく移動していきます。
スポーツの種類によっては姿勢が良くなるので、胃から食道への胃酸の逆流を防ぐ上で効果があります。

特に、食べ過ぎによる肥満でお腹が出っ張っている人や、日頃から猫背のくせがあるような人にとって適度なスポーツは症状改善に効果が期待できます。

激しいスポーツは、疲労を蓄積させて逆にストレスになりやすいのでかえって症状を悪化させることがあるのでウォーキングなどの軽い有酸素運動が良いとされています。自分の体力に応じた適度な運動を心掛けましょう。



食道炎・食道潰瘍

食道炎・食道潰瘍の主な症状:胸やけ、つかえた感じ

 食道(ショクドウ)の粘膜(ネンマク)に炎症が起こり、胸やけやしみる感じ、さらにはつかえた感じなどがあらわれる病気です。

炎症の原因はさまざまで、単純ヘルペスなどのウイルス感染、カンジダなどのカビ感染や、薬物、誤って漂白剤などの化学物質を飲み込んで起こる腐食、食道の悪性腫瘍の治療のために行った放射線照射などがあります。

大きめの内服液を水を使わずに飲んだり、薬剤が入っていたシートごと飲んでしまったりすると、食道にひっかかって炎症を起こします。

 食道の粘膜にできた炎症がさらに深くなって潰瘍(カイヨウ)ができると、ひどい胸やけや、痛み、つかえた感じなどが起こります。出血すると吐血(トケツ)を起こしたり、食道に穴が開いて(穿孔)、食道の外側にまで炎症(縦隔炎)が及ぶ場合もあります。


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食道神経症

食道神経症の主な症状

 実際には、喉(ノド)に異物などはないにもかかわらず、喉や食道の上部に球状のかたまりが引っかかっているように感じる病気で、よく「のどに卵が詰まっている感じがする」などと表現されます。食道神経症も、神経症の一種で、別名、ヒステリー球、食道球(ショクドウキュウ)、咽喉頭違和感症(インコウトウイワカンショウ)などと呼ばれます。胃・食道逆流症(GERD)の症状のひとつとしてあらわれる場合もあります。


食道神経症の検査方法
 他の病気を否定し、納得して治療を受けていただくための内視鏡検査を行います。


食道神経症の治療方法
 自律神経のバランスの崩れから、食道の動きが悪くなっていることもあるため、食道の動きをよくする薬を使います。また、仮面うつ病の症状として出ている場合などには、抗うつ薬が効く場合もあります。
 検査で異常がみつからないと、「気のせい」などと言われてしまうこともありますが、自覚症状が改善されないと本人は不安になり、ドクターショッピングを繰り返すきっかけになってしまいます。納得がいかない場合には、遠慮せずに消化器の専門医にかかりましょう。専門医は心の問題が身体の変調としてあらわれるケースを多く見ているため、かえって適切な治療ができる場合が多いのです。

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食道良性腫瘍

食道良性腫瘍の主な症状

 食道にできる良性の腫瘍(シュヨウ)に、食道平滑筋腫(ショクドウヘイカツキンシュ)という病気があります。粘膜下腫瘍(ネンマクカシュヨウ)と言って、粘膜の下に、ちょうど絨毯(ジュウタン)の下に野球ボールが隠れたような状態で出てきます。ですから、腫瘍の表面は周囲と同じ外観です。食道の下部に発生することが多く、大きくなるとつかえの症状が出てきます。


食道良性腫瘍の検査方法 内視鏡検査を受けたときに、偶然発見されます。粘膜の下にできているので、ただ表面が盛り上がった状態しかわかりません。大きくなると悪性腫瘍との鑑別が不可欠なので、超音波内視鏡で粘膜の下をきちんと検査します。


食道良性腫瘍の治療方法
 食道良性腫瘍のうち、小さなものは経過観察のみですが、大きなもので症状があったり、悪性との鑑別が難しい場合は、切除することがあります。


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食道狭窄(しょくどうきょうさく)

食道狭窄の主な症状
 食道狭窄(ショクドウキョウサク)とは、食道ガンの手術後や放射線治療後、胃切除後の食道炎から潰瘍(カイヨウ)ができてしまった場合などに、治癒の過程でその部分だけが引きつれて食道の内腔が狭くなってしまった状態です。ただし、最近では潰瘍に対しPPI(プロトンポンプ阻害薬)を使うため、食道狭窄を起こすことはほとんどなくなっています。
 食道静脈瘤(ショクドウジョウミャクリュウ)の治療で、硬化剤を入れた部分に瘢痕狭窄(ハンコンキョウサク)が起こる場合もあります。食道の通りが悪くなってしまうと、食物がつかえてしまい、時に痛みが起こる場合があります。


食道狭窄の検査方法
 自覚症状として、食べ物が飲み込みにくくなる嚥下障害(エンゲショウガイ)があれば、バリウム検査、内視鏡検査、食道の外側の診断のためCT検査を行います。


食道狭窄の治療方法

 専用のバルーン(風船)を使って、狭くなった部分を広げますが、場合によっては手術が必要になることもあります。なお、食道が狭くなっていても、腫瘍(シュヨウ)による狭窄(キョウサク)には、」このような治療は行いません。悪性化した組織は硬いので、バルーンを使っても広がらないからです。
 ガンによる狭窄の場合は、手術で狭窄部を切除して胃とつなぎますが、胃と食道のつなぎ目の噴門(フンモン)がなくなってしまうので、逆流による誤嚥性肺炎(ゴエンセイハイエン)を起こしやすくなります。
 合併症などがあり、手術ができない場合には、内視鏡を使って、狭くなっているところに網目状のステントを入れて、少しずつ広げていく治療を行います。効果は一時的ですが、食べ物や水分が通るようになるので、口から食べることができ、患者さんの生活の質が期待できます。


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バレット食道

バレット食道の主な症状
 バレット食道は、逆流性食道炎が慢性的に続いた結果、正常な食道の粘膜が円柱上皮(胃粘膜の上皮)に置き換わってしまった状態で、放置すると食道癌(ガン)に移行する可能性が高いため、最近注目を集めている病気です。疫学調査によれば、バレット食道は、高齢の男性に多く、とくに食道穿孔ヘルニアのある人に多く発生していることがわかっています。


バレット食道の検査方法
 バレット食道自体に特有の自覚症状はとくにありませんが、逆流性食道炎や食道穿孔ヘルニアと合併している頻度が高いので、胸やけや呑酸(酸っぱいものが上がる)などの症状を訴える場合が多く見られます。こうした症状があった場合には、内視鏡検査を受けることが必要です。


バレット食道の治療方法バレット食道は、食道ガンの危険因子なので、定期的な内視鏡検査を欠かさずに受けて、癌を早期発見することが不可欠です。早期発見なら内視鏡で粘膜を切除すれば完治します。

         
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食道アカラシア

食道アカラシアの主な症状
 食道アカラシアは、噴門(フンモン)という食道と胃の継ぎ目が痙攣(ケイレン)によって開かなくなって、食べ物を食道から胃に送り込むことができなくなる病気です。食べたものが食道にたまり、食道はしだいに拡張していきます。

横になると、食道にたまった食べ物が口の中まで逆流してきます。ただ、食べ物自体の重みでゆっくりと胃に入っていくため、食事が胃に運べずに体重が減ってしまうのは全体のほぼ半数です。食道壁内の筋層が肥厚(ヒコウ)し、粘膜にも炎症が起こるため、そこから癌(ガン)が発生する頻度も高くなることが報告されています。

 固形物は飲み込めるのに、水分が飲み込みにくくなるのが代表的な自覚症状ですが、逆流、胸やけ、胸痛を伴うことが多いため、胃・食道逆流症と間違って診断されることもあります。
はっきりとした原因はわかっていませんが、各種ウイルスや麻疹ウイルスとの関連性も指摘されています。




食道アカラシアの検査方法
 胃・食道逆流症と間違えられやすいため、鑑別を行うために、胸部X線検査や心電図のほか、食道造影検査で食道の形態を、また内視鏡検査で食道の内腔を食道内圧検査で食道の動きを観察します。

「食道内圧検査」とは?

 圧力計を備えたチューブ(マノメーター)を鼻または口から食道に挿入して食道内の圧力を測定する検査です。食道の収縮によって食べ物が正常に胃の中に送られているかどうかがわかります。


           
食道アカラシアの治療方法
 噴門(フンモン)での通貨障害を改善させるため、専用のバルーンで噴門を拡張する治療が広く行われています。食道アカラシアに対するバルーン拡張術の有効性は32~98%と報告されています。また、1年後の有効率が75%との報告もあります。

しかしながら、若い人では、比較的効果が不十分な場合が多いため、腹腔鏡による食道切除術を行う場合もあります。

また、噴門の緊張を和らげるために薬物療法を行い、一時的に症状を改善させる場合があります。使用される薬剤はカルシウム拮抗薬や亜硝酸薬をはじめ、抗コリン薬、テオフィリン、モルヒネ、リドカインなどがあります。

ただし、薬物療法のみの治療では、効果が不十分なことが多いことから、拡張術を行うまでの補助療法や拡張術を行えない場合の治療法として考えられています。

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食道静脈瘤(しょくどうじょうみゃくりゅう)

食道静脈瘤の主な症状
 食道の静脈への血流が増し、食道静脈(ショクドウジョウミャク)のうっ血や緊張が起こって、静脈が大きく膨らんで、蛇行した状態です。肝硬変(カンコウヘン)などの門脈圧亢進症などが原因です。なんらかのきっかけで静脈瘤に傷がつくと、食道静脈瘤(ショクオヅジョウミャクリュウ)が破裂して、大量の吐血(トケツ)や下血(ゲケツ)を起こし、ショック状態になることもあります。


食道静脈瘤の検査方法
 食道静脈瘤の診断は、上部消化管内視鏡検査で行われます。静脈瘤破裂の危険性を知るためには、静脈瘤の観察を慎重に行うことが必要とされます。破裂の危険性が最も高い兆候として、発赤(ハッセキ)所見が重要とされ、早急な治療が必要です。また、基本色調が青色のものは白色よりも粘膜が薄くなって緊張感が強く、破裂の危険性が高いことを示します。ほかに、出血した場所にみられ再出血の原因となる所見に、静脈瘤にくっついた赤色栓、白色栓などがあります。超音波検査や造影CT、MRIなどは、門脈系や腹腔内の血管の状態を診断するのに有用とされています。


食道静脈瘤の治療方法
 吐血(トケツ)などの緊急例に対しては、内視鏡的治療が第一選択となります。緊急の場合は、どこから出血しているのかを見つけ出すことが最優先となりますが、食道は狭い筒状の臓器で、出血が起こっている最中には内腔に多量の血液がたまっているので視野を確保するのが困難になります。このため、静脈瘤治療に精通した内視鏡医が担当することが重要です。出血している場所がわかれば、内視鏡下に静脈瘤内あるいは周囲に硬化薬を注射する硬化療法を行います。肝機能が悪い場合は、より簡便な、静脈瘤(ジョウミャクリュウ)に輪ゴムをかける結漿(ケッショウ)療法を選択します。緊急でない場合も、静脈瘤からの出血を予防するため、内視鏡で観察しながら硬化療法を行います。
肝機能が低下していたり、出血がひどくですぐに治療が困難な場合には、バルーンで圧迫止血を行ってから内視鏡治療が行われます。

「下血(ゲケツ)」とは?

食道や胃、十二指腸からの出血のことです。上部消化管から出血すると、便が黒色となったり、多量の場合はコールタールのようなタール便がみられます。結腸や直腸などからの出血は鮮紅色であり、血便と呼ばれます。


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逆流性食道炎の基礎知識

逆流性食道炎になりやすいのはどんな人?

逆流性食道炎になりやすい人とはこの原因に陥りやすい人と言えます。

まず挙げられるのが、高齢の方です。
高齢になると、その他の身体機能の低下と同様に、食道括約筋や横隔膜の力も衰えます。
更に食道のぜん動運動も活発でなくなりますから、逆流性食道炎になりやすいのです。
その意味では、老化によって胃酸の逆流が増えるのは仕方の無いことと言えるでしょう。
また、胃の手術などを受けたた方も、食道括約筋の機能が低下する場合があります。
こちらも病気によっては必要な手術もありますから、老化と同様に避けることが難しいのです。

一方、胃の圧力が上昇しやすい人は、肥満の方や妊婦の方、前かがみの姿勢の方、肉や脂肪を多く採る方、などです。
肥満や妊娠、前かがみの姿勢では、胃が押し上げられたり、圧迫されることが多くなります。
特に肥満や前かがみの姿勢が慢性的に続くと、胃が長期にわたり押し出されて、食道裂孔ヘルニアになる場合もあります。
また、肉や脂肪の多い食事は胃酸の分泌が活発になるため、胃の圧力が上昇しやすいのです。
こうした食の好みは、肥満の原因にもなりますから、その点でも逆流性食道炎を起こしやすい人と言えるでしょう。

日本では、近年になって逆流性食道炎の症状をうったえる方が増えてきました。
これには、社会の高齢化や欧米志向の食事などが大きく関係しています。
妊娠や加齢は仕方のないことですが、姿勢や食生活など思い当たることがある場合は、これらを改善することで、症状が緩和される場合もありますから、一度生活を振り返ってみることが大切です。
ただし気になる症状がある場合には、必ず医療機関を受診しましょう。
実は、深刻な病気が隠れていることもあるのです。


逆流性食道炎を引き起こす原因は?

逆流性食道炎は、胃に入った食物が食道へ逆流することで起こります。
なぜ、食物が胃から食道へ逆流するのでしょうか。
この原因には、次のようなことが挙げられます。

一番大きな原因は、食道括約筋や横隔膜の働きによって閉じていた、胃と食道の境目が緩んでしまうことです。
実は食道括約筋や横隔膜の圧力は、年齢とともに力が弱くなっていくことが分かっています。
食道はこの二つの力によって締められていますから、これらが緩くなると、食べ物を飲み込む時に開いた食道が、なかなか閉じなくなるのです。
そのため胃から逆流が起こりやすくなります。
また、胃が食道側へはみ出してしまう、食道裂孔ヘルニアという症状がありますが、この症状も横隔膜の圧力が弱くなることで起こります。
胃が食道側にはみ出た状態になりますから、逆流は当然ひどくなります。

二つ目の原因は、食道のぜん動運動が鈍くなることで、食物を胃へ運ぶ機能が低下することです。
こちらも加齢による影響が大きいとされています。
食べた物は、もちろん重力によって下に降りていきますが、食道のぜん動運動が活発に行われることで、食物がスムーズに胃に送り込まれます。
そのため食道のぜん動運動が低下すると、胸の辺りに食べ物が詰まったような感覚になりやすいのです。
また、胃から逆流した食物を戻すこともできなくなるので、逆流した食物がのど元まで上がってくることもあります。

三つ目は、胃からの圧力が上がることです。
炭酸飲料を一気に飲んだり、食べ過ぎたりすると、胃の圧力が一時的に上がり、ゲップがでたり胃酸が戻るような感覚になることがあるでしょう。
胃の圧力は食事の量や内容などによっては、誰でも一時的に上昇することがありますが、繰り返すことで逆流性食道炎を起こしやすくなりますので、注意が必要です。

次の章では、こうした原因に陥りやすい人について、詳しく見ていきましょう。


食道や消化器官の働き

逆流性食道炎の原因を理解する上で、まずは食道や消化器官の働きを知ることが重要です。
これらの器官が、どのような機能を持っているのか説明しましょう。

そもそも食道は消化器官の一部です。
口から入った食物が肛門から排出されるまでの、一連の流れを行う器官を消化器官と呼びます。
消化器官は、口、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門が一本の管でつながれています。
そしてそれぞれの臓器が、食物を消化・吸収するための役割を果たしています。
食道は、消化器官の中で消化液を分泌しない臓器です。
その大きな役割は、食べた物を胃へ送ることです。
食べた物は食道のぜん動運動によって、胃に送られます。
このぜん動運動は食べ物を胃に送るだけでなく、胃からの逆流を防ぐ役目を果たします。
更に、食道と胃の境目には横隔膜があり、食道を支えたり、食道を締めて胃に入った食物が逆流するのを防いでいます。
その他、食道括約筋も食道と胃の境目で食道を閉じるために働いています。
なぜこうした機能が必要なのでしょうか。

一度食べたものが、逆流すると栄養が吸収されなくなってしまいますから、消化器官は食べ物を下へ下へと運ぶ仕組みになっています。
加えて、胃酸はとても強い酸性の消化液です。
消化液を分泌しない食道の粘膜は、消化液から自身を守る機能が備わっていないのです。
そのため、胃酸が逆流すると粘膜がダメージを受け、炎症を起こしやすいのです。
このように、消化吸収を正常に行い、臓器を健康に保つためには、食物を逆流させない仕組みが必要です。


逆流性食道炎と症状が似ている心筋梗塞

心筋梗塞の症状は、先に紹介した狭心症と殆ど同じです。
心筋梗塞は狭心症の悪化した状態ですから、原因も症状も狭心症と重なるのは当然のことです。
心筋梗塞になると冠動脈が長時間詰まり、血液が心臓の細胞に届かなくなるため、心筋の壊死が起こっている状態になります。
そのため症状が似ていても、狭心症に比べて事態は深刻です。
胸の痛みや苦しさが、30分以上続く場合には急性心筋梗塞の可能性が高くなります。
また心筋梗塞では、胸の痛みや締め付けるような苦しさに加えて、左の肩や顎にも痛みが広がる場合もあります。
最悪の場合には、死に至ることもある病ですから、正しい処置が重要になります。

狭心症の段階で治療を開始していれば、心筋梗塞に至らずに症状を改善することも可能です。
逆流性食道炎と診断されていても、胸の継続的な痛がある場合には、定期的に循環器系の検査も行うようにしましょう。
心筋梗塞では動脈硬化も大きな原因の一つになりますので、コレステロールの多い食事を摂っていたり、肥満の傾向がある人は、食生活を改善することが重要です。
繰り返しになりますが、逆流性食道炎も心臓疾患も生活習慣が大きく関係している点では、生活改善は欠かせません。

また症状を悪化させないためには、日ごろから健康状態の変化を見逃さないことが大切です。
忙しい現代では、症状さえ治まれば何も無かったかのように、体の不調を忘れてしまいがちです。
しかし、逆流性食道炎にしても心筋梗塞にしても、初期段階でのサインに気づくか気づかないかが、その後の症状を左右します。
また、体の不調を敏感に読み取ることで、受診の際の誤診を防ぐこともできます。
医者まかせにするのではなく、自分の体を知り、知識を持つことが、病気予防には重要なのです。


逆流性食道炎と症状が似ている狭心症

狭心症とは、心臓に血液を供給する血管が細くなったり、つまったりすることで起こる症状です。
心臓は心筋という筋肉によって、その絶え間ない動きを保っています。
心筋には、冠動脈という血管から送られる酸素と栄養が必要不可欠ですが、この冠動脈に何らかの異常が起きると、心筋が正常に働くことができなくなります。
その結果、胸が締め付けられるように苦しくなったり、胸の周辺が痛くなるという症状が現れます。
この症状は一時的に発生し、十数分以内には症状が治まることが多いですが、ひどい場合は呼吸困難や嘔吐を伴うこともあります。

こうした症状が出たときには、すぐに医療機関を受診しましょう。
症状が辛い割には、一時的に症状が治まってしまい、心電図検査などでは狭心症の診断が難しい場合もあります。
その際に、症状が似ていることから、逆流性食道炎と診断されることもあります。
狭心症を発症する方に、高血圧や肥満の傾向があり、逆流性食道炎の原因とも重なることも、診断を難しくする一つの理由になっています。

しかしながら、逆流性食道炎と狭心症では治療法は全く異なります。
逆流性食道炎と診断されて、薬を服用しても症状が改善しない場合には、狭心症の症状も疑ってみましょう。
逆流性食道炎の場合は、胸の痛みだけでなく、その他の症状も同時に現れることが多いので、実際に起こっている症状を冷静に判断することも必要です。

一方で、気にしすぎてストレスを抱えすぎないことも大切です。
ストレスは、逆流性食道炎と狭心症のいずれも引き起こす原因になることを、覚えておきましょう。


逆流性食道炎と症状が似ている食道がん

道がんは、他のがんと比べて死亡率が高いことが知られています。
そして食道がんの症状には、逆流性食道炎と同じ症状が見られることが多いのです。
飲食時にしみたり、飲み込めずにつかえる、声がかすれるなどが代表的な食道がんの症状ですが、どれも逆流性食道炎の症状でもあります。
ただし、食道がんの場合は自覚症状がある場合には、既にがんが進行していることが多いです。

食道がんの主だった原因として挙げられるのが、飲酒や喫煙など食道に負担をかける行為です。
また、逆流性食道炎を悪化させたまま治療をしないでいると、食道がんの原因になることがありますので、注意が必要です。
これは、食道の粘膜が胃酸の刺激を受け続けることによって、胃の粘膜に似た組織に変わるバレット食道という症状に関係しています。

欧米では逆流性食道炎の患者が多いことに比例して、食道がんの原因にもバレット食道の症状を持つ方が多いという報告があります。
現在日本では、食道がん自体はそれほど患者数が多くなく、またバレット食道から食道がんを発症するケースも欧米に比べて少なくなっています。
しかし、逆流性食道炎をうったえる方が増加している背景を考えると、今後はバレット食道が原因の食道がんが増える可能性が高いのです。

バレット食道になると、もとの食道粘膜の状態に戻すことは非常に難しくなります。
バレット食道と診断されたら、定期的に内視鏡の検査を受けることが重要です。
上でも触れたように、食道がんは自覚症状がでてからでは手遅れな場合もありますから、がんの早期段階での発見が最も有効な治療と言えます。
しかしバレット食道になる前に、逆流性食道炎を放置せずに治療することが、何よりも大切なことは忘れてはいけません。


生活習慣を見直して逆流性食道炎を改善

逆流性食道炎の症状改善に、生活習慣を見直すことは欠かせません。
そもそも逆流性食道炎の原因である、食道下部の緩みは加齢によるものだけでなく、生活習慣からの影響も大きく受けているのです。
同じ高齢の方でも、逆流性食道炎の症状が見られない方もたくさんいらっしゃいますから、若いうちから食事や生活習慣に気を配ることが大切です。
たとえ薬物療法や手術治療などで、症状が改善しても生活習慣の中にその要素がある限りは、症状は再発する可能性が高いのです。
特に次に挙げる習慣があれば、改善することが望ましいでしょう。

<胃酸の分泌が過剰になっている可能性があります>
・日ごろから、過食や飲酒を繰り返している方。
・脂っこい料理や刺激の強い食品をよく摂取する方。
・肉食を好む方。

<胃に過剰な圧力がかかり、腹圧が上がっている可能性があります>
・肥満や便秘体質で、腹部が常に圧迫されている方。
・妊娠中の方。
・猫背で前かがみの姿勢の方。
・ベルトや下着で腹部を締めるている方。
・腹部を圧迫する運動をされる方。

また食後、すぐに横になる方は胃酸が逆流しやすくなります。

これらの習慣に加えて、ストレスが強くなると胃酸の分泌が増え、胃潰瘍などの症状を起こすことも知られています。
胃酸が増えているわけですから、当然逆流する可能性も高くなります。

こうした習慣は、現代では該当しない人の方が少ないかもしれません。
その点では逆流性食道炎は、現代病の一つと言っても良いほどなのです。
だからこそ改善が難しいとも言えます。
しかし、逆流性食道炎の症状は一度進行すると、生活の質の低下は避けられません。
症状に苦しむことになる前に、思い切って生活改善に取り組んでみましょう。


外科治療により逆流性食道炎を改善

逆流性食道炎の治療には、薬の服用が最も一般的ですが、薬を服用しても症状が改善しなかったり、食道裂孔ヘルニアの場合には、外科的な手術が行われることもあります。

手術では、食道側にはみ出した胃を正しい位置に戻し、緩くなった食道と胃の境目を締めるように縫合します。
胸や腹部に開けた穴から内視鏡を挿入して行う、ニッセン法という手術方法は広く行われている方法です。
しかしこの方法は、開腹して行う手術ですから、全身麻酔と1週間程度の入院期間が必要なため、体への負担が大きい方法でもあります。
現在では、開腹せずに口から挿入した内視鏡などで手術をする方法もあり、手術時間も短時間で済み、入院期間も3日程度と負担が少ないことが魅力です。
ただし、この手術については健康保険が適用になってから、まだ日が浅く実施している医療機関が限られるなど、課題が多いことも事実です。

こうした手術による治療は、胃酸が逆流する原因を根本的に取り除くことができますから、短期間で症状を改善したい場合には、最も効果的な方法です。
特に、若い方で逆流性食道炎を患っている場合には、PPIなどの強い薬を長期間服用することによる副作用も気になるところですから、手術を検討してみても良いでしょう。
一方で、開腹や内臓の縫合などによるダメージは避けられませんので、その点のリスクも理解する必要があります。
胃や腸の手術に比べて、食道の手術は技術を要すると言われます。
治療方法の選択は、患者自身の意思が尊重されるべきですが、正しい知識を持たずに手術などの重大な選択をすることは危険ですから、担当医とよく相談して決めるようにしましょう。

また手術で症状が改善しても、生活習慣自体に逆流性食道炎を誘発する要素を抱えたままでは、症状が再発することもあります。
その点では、手術をした場合も同様に生活改善を併せて行っていくことが大切になるのです。


薬物治療により逆流性食道炎を改善

逆流性食道炎の治療では、薬の服用による対処療法が一般的です。
対処療法ですから、逆流性食道炎の根治療法とはとは言えませんが、逆流性食道炎の症状は日常生活の質を下げるような深刻な症状もありますから、まずは症状を緩和させることがとても重要なのです。

逆流性食道炎の原因は、当然のことながら胃酸の逆流です。
この胃酸の分泌を抑えることを目的に投与されるのが、プロトポンプ阻害剤(通称PPI)とH2ブロッカーなどの、胃酸分泌抑制剤です。
特にプロトポンプ阻害剤の効果は高く、数種類を組み合わせて処方されることもあります。
胃酸を中和させる制酸剤という薬がありますが、こちらは効果が持続しないため、胃酸分泌抑制剤一緒に処方されることが多いようです。

次に食道のぜん動運動を促す目的で処方されるのが、消化管運動機能改善剤です。
食道の運動機能を高めることで、胃酸の逆流があっても押し戻すことができます。
更に食道に限らず、消化器官全般に作用するため、胃の消化機能も高めて内部に食物が長く滞留しないようにする効果も期待できます。

また、食道の粘膜がすでにただれたり炎症を起こしている場合には、これによる不快症状を緩和させることが先決ですので、粘膜保護剤も用いることがあります。
傷ついた粘膜を修復するだけでなく、粘膜の保護にも効果があります。

逆流性食道炎の原因には、複数の要因が関わっていることが多いと説明しました。
そのことからも、投薬にも複数の薬が組み合わされることが殆どです。
繰り返しになりますが、薬では逆流性食道炎を完治することは難しいので、症状が改善しないのに我慢して服用を続ける意味はありません。
症状や体質などによっては、薬が合わないこともありますので、症状が改善しないときには、すぐに医師に伝えて、薬を変えてもらいましょう。


逆流性食道炎に必要な受診料と検査方法

逆流性食道炎と思われる症状が出たら、何科を受診すれば良いのでしょうか。
現在では、逆流性食道炎の患者の増加に加え、症状に対する医師の知識も豊富になって来ていますから、その症状ごとに違う科を受診しても、大抵は同様の検査が行われるようです。

むねやけの場合には、内科や消化器科、胃腸科などを受診する方が殆どでしょうし、これらの科は逆流性食道炎の治療には最も適した科と言えます。
また胸の痛みが辛い時には、まずは循環器科を受診して問題なければ、上記の科を受診すると良いでしょう。
胸の痛みには深刻な病気が隠れている場合もあるので、まずは心臓に問題が無いかを優先して確認するようにしましょう。
また鼻やのど、耳などに症状が見られる場合には、耳鼻科を受診することになると思いますが、こちらでも逆流性食道炎の場合には内科の診断と同様の処方をするところが多いようです。
こちらも耳自体に炎症が無いか、確認する上でもまずは耳鼻科を受診することをお勧めします。

逆流性食道炎の検査には、主として内視鏡検査が行われます。
内視鏡とは細い管の先にカメラがついた医療検査器具で、一般に胃カメラと呼ばれるものです。
この内視鏡を口や鼻から挿入し、食道や胃の状態を確認する検査が行われます。
嘔吐の症状がある方には辛い検査ですが、食道粘膜の状態を直接カメラで確認することができるので、最も信頼できる検査と言えます。
またphモニタリングと言う、食道内の酸性度を測る検査が行われる場合もあります。
この検査では、胃酸の逆流の程度を調べることができますが、最低でも丸一日のモニタリングが必要になります。
その他にも、レントゲン検査や問診などが行われて、総合的に診断が行われます。


逆流性食道炎でもっともつらい吐き気や嘔吐の症状

逆流性食道炎の症状が進んでくると、吐き気や嘔吐症状が出ることがあります。
逆流性食道炎の原因のところで触れたように、食道括約筋や横隔膜の機能の低下に加えて、胃酸の過剰な分泌は、胃酸が逆流しやすくなる条件に挙げられます。
逆流性食道炎は、単一の原因によって起こるというよりは、これらの原因がいくつか重なっている場合が多く、またその症状も多岐に渡ります。
例えば、「食道括約筋の機能低下で食道と胃の境目の締りが緩くなり、胃酸の逆流が頻繁に起こっている時に、胃酸が気管支に逆流して、激しく咳き込むことで腹部に圧力がかかり、胃の内容物まで逆流してしまう」といった複合的な症状です。

逆流性食道炎の症状はどれも、生活の質を低下させるものばかりですが、中でも嘔吐は最もつらい症状と言って良いでしょう。
実際には、アルコールの過剰摂取や食べすぎなどが原因で嘔吐した際に、逆流性食道炎を煩っている方も少なくありません。
食生活の中に、嘔吐を誘発させる原因が無いか考えてみましょう。
また、吐くと楽になるからと、嘔吐を習慣化させることも体への影響を考えると非常に危険ですから、絶対に止めましょう。

嘔吐は、生活の質を低下させ、ひどい時は社会生活に支障をきたすこともある症状です。
また、嘔吐は精神的なストレスによっても起こりやすくなりますので、嘔吐を繰り返すことで更にストレスとなって嘔吐が慢性化している可能性もあります。
頻繁に嘔吐が起こるようであれば、逆流性食道炎の治療に加えて、心療内科などの精神的なケアも必要な場合もあることを覚えておきましょう。


逆流性食道炎によるのどの痛みの症状

逆流性食道炎の症状で、口の中にすっぱい液が上がってきたり、苦味を感じることがあります。
これは、胃酸の逆流がのどまで達している証拠です。
のどの粘膜にとっても、胃酸は強い刺激であることは同じですから、こうした症状が頻繁に起こると、のどの粘膜も炎症を起こすことがあります。

のどの炎症は痛みを伴うだけでなく、粘膜がただれれると、のどに違和感を感じたり、食事の際にはのどに食べ物がつかえた感じがするようになります。
この症状が慢性化してくると、のどの周辺の器官にも影響を及ぼすことがあります。
鼻の奥がひりひりと痛くなったり、声がかすれたり、更に胃酸を気管に吸い込んで気管支炎を起こすこともあります。
一見、逆流性食道炎の症状とは関係の無いように思われるかもしれませんが、それだけ胃酸の刺激が強いということです。

のどの粘膜の炎症は、風邪などのウィルス疾患による場合は、風邪症状の緩和と乾燥対策によって自然に治ります。
しかし、逆流性食道炎の場合は胃酸が逆流している限りは症状は続きますので、のどのケアの前に胃酸の逆流を改善することが先決です。
症状を放置して炎症がひどくなると、扁桃腺やリンパ腺に影響を及ぼして発熱を伴う症状に至ることもあります。
また逆流性食道炎によってのどの痛みが起こっている場合には、胃酸が逆流する過程で食道もかなり荒れた状態になっていることが予想されます。
のどのケアは飴をなめたり、うがいをしたりと事故治癒力に頼りがちですが、痛みが慢性化している場合は逆流性食道炎の可能性が高いと考えて良いでしょう。


逆流性食道炎による胸の痛みの症状

胸に痛みや、強く締めつけられるような症状がある時、気になるのは心臓疾患などの循環機器に関わる病気でしょう。
循環器系の病気は、重症でなおかつ致命的なものもありますので、胸の痛みを感じたら、まずは循環器系の検査を行いましょう。
それでも異常が見つからない場合は、逆流性食道炎の症状の可能性も考えられます。
逆流性食道炎も胸に痛みを伴う場合があるのです。

繰り返しになりますが、胃酸が逆流すると食道の粘膜は大きいダメージを受けます。
肌が敏感な人がいるように、食道の粘膜の強さも個人差があります。
たった一度の嘔吐でも、食道の粘膜がただれてしまう人もいるでしょう。
食道の粘膜も皮膚と同じく、ただれれば痛みも伴います。
その痛みが、胸の痛みとなって表れている可能性があるのです。
非常に激しい痛みとなって表れ、呼吸が苦しくなる場合もあります。
その場合、いくら循環器系や胃の検査をしても原因は分かりません。
原因不明のため、鎮痛剤を処方されることが多いようです。

日頃から、むねやけなどの症状にも心当たりがある場合は、逆流性食道炎による可能性も疑ってみましょう。
また食道が荒れている限り、胸の痛みは繰り返す可能性があります。
食べすぎやアルコール摂取の後にも、胃酸が逆流することがありますから、胸の痛みを感じる前の行動を確認してみることも大切です。
その上で食道の検査をしてもらうと、問診の際に状況を伝えることができるので、より正しい診断を得ることができます。

また原因が分からないからと、自己判断で痛みを我慢することは危険です。
苦痛が続くだけですし、最悪の場合には、深刻な疾患を見逃してしまうことにもなりかねません。
痛みが出たら、必ず医療機関を受診することが大切です。


逆流性食道炎によるげっぷの症状

げっぷが食後や炭酸系の飲料水を摂取した後には、誰でも出やすくなるものです。
げっぷは飲食の際に一緒に飲み込んだ空気を、胃から外に逃がすために大切な機能の一つです。
乳児がミルクを与えた後にげっぷをさせることは、ミルクと一緒に飲み込んだ空気が胃を圧迫して、ミルクをを吐き出すことを防ぐためです。
胃の中で、適度な空気は消化の助けになりますが、過剰な空気は胃に負担をかけます。

げっぷを出すためには、食道と胃の境目にある食道括約筋や横隔膜によって締められている部分を開けて、胃の空気を逃がす必要があります。

胃の空気圧が上がると、自然と空気を逃がすために締まっている部分が開く仕組みになっており、食後などの通常の頻度であれば、特に問題はありません。

しかし頻繁にげっぷが出るようになると、こうした開閉システムを頻繁に使うようになり、締まりが緩くなる可能性があるのです。

締りが緩くなるということは、食道括約筋や横隔膜の力が弱くなっている証拠です。
当然ながら、胃酸も逆流しやすくなります。

更に、この状態が続くと、食道裂孔ヘルニアを起こしやすくなるため、逆流性食道炎が進行していきます。
げっぷが頻回に起こる場合は、食事の仕方を見直したり、炭酸飲料を控えるなどして、げっぷが起こる状況事態を減らしていくことが大切です。

しかし一方で、逆流性食道炎が原因でげっぷが頻繁に起きている可能性も考えられます。
げっぷはむねやけなどに比べて、それほどつらい症状ではないため、ついつい見落としがちです。
生活を振り返っても、げっぷの原因が分からない場合には、既にに逆流性食道炎が進行している可能性も考えられますので、早めに医療機関を受診しましょう。


逆流性食道炎の代表的なむねやけの症状

逆流性食道炎の代表的な症状が、むねやけです。
むねやけと一言にいっても、その症状は様々です。
「胸が焼け付くような感じ」「胸からのどにかけて、食べ物がつまったような感じ」「みぞおちの辺りがチリチリと熱い」などは、いずれもむねやけの症状と言えます。
食道はのどから胃までをつなぐように位置していますから、逆流性食道炎では、胸からみぞおちにかけての症状を感じやすくなるのです。

むねやけのこれらの症状は、胃酸が逆流することで食道が炎症を起こしている証拠です。
先にも触れたように、食道は胃酸から粘膜を守るための機能が備わっていません。
そもそも食道は胃に食べ物を送り込むことが本来の目的ですから、胃から逆流する胃酸に対する防護機能は必要ないのです。
一方、胃酸は肉も溶かすほどの強い酸性の成分を含みます。
そのことからも想像できるように、胃酸が逆流するということは、食道の組織を溶かすことになるのです。
食道の粘膜が溶けてただれることで、上に挙げたような不快感が起こります。

むねやけが続けば続くほど、食道の炎症は進んでいると考えられますから、たかがむねやけと放置しておくことは危険です。
むねやけは食べすぎなどでも起こるため、症状の深刻さに気づきにくいものです。
しかし自覚症状のあるなしに関わらず、症状が進行すると出血なども起こす可能性があります。
逆流性食道炎が原因で、食道がんに至るケースもありますから、早めに対処して、症状を慢性化させないようにしましょう。


食道裂孔ヘルニアとは

私たちの体の胸部と腹部の間には横隔膜という筋肉でできた膜がありますが、この横隔膜には、食道や大動脈、大静脈が通るための穴が開いています。このうち、食道が通っている穴を食道裂孔といいますが、胃の一部がこの食道裂孔から上の胸部に脱出してしまっている病気を食道裂孔ヘルニアといいます。食道裂孔ヘルニアには、食道と胃のつなぎ目(噴門部)が胸部に出ているタイプ、胃の一部が出ているタイプ、この2種類が混合したタイプがあります。

食道裂孔ヘルニアのタイプ

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食道裂孔ヘルニアの原因

食道裂孔ヘルニアは、肥満、喘息、慢性気管支炎などでおなかの圧力が高い状態にあることが原因で起こります。その他にも、加齢によって食道裂孔がゆるくなったり、背骨が曲がったりしている場合にも、起こりやすいといわれます。生まれつき食道裂孔がゆるく、食道裂孔ヘルニアを起こしやすい方もいます。

食道裂孔ヘルニアと逆流性食道炎

横隔膜は食道裂孔の部分で食道を締めつけ、胃の内容物が食道に逆流するのを防ぐ働きを持っています。しかし、食道裂孔ヘルニアになると横隔膜による締めつけができにくくなり、逆流が起こりやすくなって逆流性食道炎が起こりやすくなります。軽い食道裂孔ヘルニアで症状がなければ、とくに治療を行う必要はありません。食道裂孔ヘルニアによって食道炎を起こし、胸やけなどの症状がある場合には、胃酸を抑える薬などで治療します。薬物療法の効果がない時や、ヘルニアの程度がひどい場合には、手術を行うこともあります。

胃ポリープとは

[どんな病気か]
 広義には、胃壁(いへき)から内腔(ないくう)に突出した限局性の隆起を胃(い)ポリープといいます。狭義には、胃粘膜上皮(いねんまくじょうひ)から発生した良性の腫瘍(しゅよう)のことをいいます。

 胃ポリープは、上皮過形成による胃過形成性(いかけいせいせい)ポリープと、腸上皮に似た異型上皮からなる胃腺腫(いせんしゅ)(胃異型上皮腫(いいけいじょうひしゅ))とに分類されます。
 胃ポリープ自体の大部分は、無症状です。まれにポリープからの出血や巨大ポリープによる噴門(ふんもん)(胃の入り口)や幽門(ゆうもん)(胃の出口)の狭窄症状(きょうさくしょうじょう)をおこします。
 がんとの鑑別やがん化が問題となるので、ポリープの除去、または長期間の経過観察が必要となります。

 胃過形成性ポリープのがん化は、きわめて少ないのですが(15年間の観察で1%以下)、胃腺腫は15年間の観察で10%ががん化します。


[検査と診断]
 上部消化管X線検査で、胃の隆起性病変が疑われれば、内視鏡検査が行なわれます。
 内視鏡下の生検(せいけん)(組織の一部を切り取って病理学的診断をすること)で、がん、肉腫(にくしゅ)、粘膜下腫瘍(ねんまくかしゅよう)(「胃粘膜下腫瘍」)などと鑑別し、胃過形成性ポリープか胃腺腫かが決定できます。


[治療]
 胃過形成性ポリープの大部分は、6か月から1年に1回、内視鏡を用いた経過観察を行なえばよいのですが、可能であるならば、内視鏡下で高周波電流を用いたポリープ切除(ポリペクトミー)、粘膜切除術(EMR)、レーザー照射などで除去します。
 除去したポリープは、顕微鏡を用いて組織学的に検査することができるため、診断もかねることができます。

 胃腺腫は、これらの方法で積極的に除去することが望ましいのですが、もし除去できない場合は、3か月から1年に1回、内視鏡下の生検をくり返しながら経過観察をします。
 もし、切除したポリープにがんがあっても、がんの深さ(深達度)が浅い粘膜固有層であれば、経過観察のみでよいのですが、粘膜下層以下に達する深い場合は、外科手術を追加して行ないます。

胃ポリープの主な症状

胃ポリープとは、胃の粘膜表面にできた盛り上がりで、典型的なものは根元に茎のある丸いキノコのような形のものがあります。

胃底腺(イテイセン)の過形成によってできた胃底腺ポリープ、胃腺窩上皮(イセンカジョウヒ)の過形成によってできた過形成ポリープ、ガンに移行する可能性のある腺腫性ポリープなど、ひと口に胃ポリープといっても、治療の必要がないものから、ガンに移行する可能性のあるものまで様々です。


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食道裂孔ヘルニア

食道裂孔ヘルニアは男性より女性に多く見られます。年齢は高齢者の方に多いのですが、先天性の場合はどの年齢の方にもみられます。

食道裂孔ヘルニアには3つ種類があります。

それは滑脱型、傍食道型、混合型といった具合です。姿勢の前かがみな人もかかりやすいと言われていますので、そのような方は注意が必要です。

自覚できる症状は、胸やけ、呼吸をする時に違和感があって苦しくなる時があるなどがありますが、これらもストレスなどでなりかねないものですので区別がつきづらいと言われています。

逆流性食道炎という病気は、胃酸が逆流して食道にかかってしまうことをいいます。こうなると、

すっぱい臭いと胃がむかむかするような自覚症状があらわれ始めます。

食道がんになる可能性も含まれていますので要注意です。

自覚症状に気づいてから病院に行くのは当然ですが、定期的に検査をすることで気づけることもありますので、一度は食道の検査をするべきでしょう。



食道がんの疑いがあるかを調べる検査

食道がんの疑いがあるかどうかを調べる検査には、「食道造影検査(レントゲン検査)」と「食道内視鏡検査」があります。また血液を採取して調べる腫瘍マーカー(血液検査)もあります。

食道造影検査(レントゲン検査)食道造影検査はバリウム(造影剤)を飲んでバリウムが食道を通過するところをX線で撮影して食道がん(食道癌)の場所や大きさなどを調べる検査です。

患者さんにとっては負担の少ない検査ですが、早期発見は難しいという問題もあります。

食道内視鏡検査食道内視鏡検査は口から(鼻からの場合もある)カメラのついた内視鏡を挿入し食道の内部を直接観察する方法です。

検査の際に「ルゴール」と呼ばれるヨウ素液を食道内にまいて検査をするヨード染色法により観察することがあります。この方法を用いれば肉眼では識別が難しい早期の食道がん(食道癌)でも見つけやすくなります。

腫瘍マーカー(血液検査)腫瘍マーカー(血液検査)は血液を採取するだけで用意に検査できるため広く普及しています。

日本人の食道がんはほとんどが扁平上皮がんであるため、「SCC抗原」という腫瘍マーカーを確認することで治療後のフォローアップなどに有用です。基準値は1.5(ng/ml)以下-EIA法/2.0(ng/ml)以下-IRMA法・RIA法です。



食道がんの男女差、年齢差

食道がんの最も多い発症事例は、60歳代後半から70歳代にかけてピークになります。

他のがんと比べると、食道がんは発症年齢が高めです。

今後は人口の高齢化が進むにつれて、食道がんにかかる人も増えてくると予想されています。

男女別でみると、食道がんは男性に圧倒的に多く、女性の約5.6倍です。

理由は様々ですが、食道がんの原因である飲酒と喫煙の習慣が男性に多く、女性に少ないことが最大の理由だと考えられています。

飲酒、喫煙は食道がんの最大の環境的な原因で、女性であっても飲食業などアルコールと喫煙が近くにある環境で働いている人は、そうでない人に比べて食道がんになりやすです。

日本人に多い扁平上皮食道がんは、特に飲酒と喫煙によって発生率が高くなる傾向にあることがわかっています。

男性に多いことから、男性ホルモンが食道がんと関係していると予想されていますし、ストレスなども深くかかわっているようです。

また、女性で食道がんにかかる人は、比較的、頸部食道がん(食道の上側、喉に近い部分に発生するがん)が多いです。

胃から食べ物が逆流しやすい体質の人も、食道の内側の粘膜が荒れやすいので、食道がんにかかりやすいようです。


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食道がんで使用する抗がん剤

食道がんを治療する化学療法のひとつに、抗がん剤治療があります。 食道がんに最も効果があるといわれている抗がん剤は、5-フルオロウラシルとシスプラチンの2種類で、通常この2つの薬を併用して、4、5日かけて点滴で投与します。

投与後の経過をみて、効果がみられるようであれば、3、4週間あけて再度投与をし、これを数回繰り返します。 抗がん剤だけで食道がんが完治することはなく、手術や放射線治療などとあわせて治療を進めていくことになります。 食道がんの場合、抗がん剤の副作用は、ほかのがんに比べて軽いといわれています。

嘔吐、下痢、発熱、倦怠感、貧血などのさまざまな症状があらわれ、白血球や赤血球の減少によって、感染症や発熱なども起こしやすくなります。また、シスプラチン特有の副作用として、腎機能の低下が起こります。 現在、抗がん剤の副作用を防ぐための薬の開発が進んでいるので、副作用は少しずつでも軽くなっていくものと思われます。

食道がんで使用する主な抗がん剤   

 名称          考えられる副作用
シスプラチン     嘔吐、血液障害、骨髄抑制、肝機能障害
ドセタキセル     髄抑制、倦怠感、食欲不振
ブレオマイシン    嘔吐、倦怠感、肺線維症
ネダプラチン     嘔吐、血液障害、腎機能障害


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食道がんの進行度


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食道がんの外科手術:治療法の選択

食道がんの治療には、がんの根治を目的にした治療法と、生活の質を高めるための緩和を目的にした治療法があります。

【根治的治療法】
外科手術
内視鏡的切除
化学療法(抗がん剤)
放射線療法


【生活の質を高める治療法】ステント治療
レーザー治療
バイパス手術

食道がんの治療法の特徴として、抗がん剤がよく効くこと、いくつかの治療法を組み合わせること、外科手術が一般的な方法 などがあります。
外科手術は、取り除く範囲が広いので、患者さんの負担も大きくなりますので、本人の体力や希望を考慮して、納得できるようにしたうえで決定されます。

 病期を目安にした治療法の選択
治療法を決定する際の目安として、食道がんの病期を参考にします。がんの進行度を示す病期ごとに、ある程度の治療法は決められています。

■0期・・・内視鏡的粘膜切除術。がんが粘膜内にとどまっており、転移がない状態なので、内視鏡的切除でがんを取り除くことができます。負担も少なく、食道もすべて残すことができます。

■Ⅰ期・・・外科手術、放射線化学療法。がんが粘膜下層にとどまっているか、転移している場合でも、近くのリンパ節だけとなっているようなときは手術でがんを除去します。放射線化学療法で小さながんを治療することもあります。

■Ⅱ期・・・外科手術、放射線化学療法。Ⅰ期とほぼ同じような状態ですが、ややがんが進行しています。手術や放射線化学療法などで治療します。

■Ⅲ期・・・外科手術、放射線化学療法。がんが食道の外に出ていたり、遠くのリンパ節に転移している状態ですが、周辺臓器には転移がありません。手術でがんを取り除き、放射線化学療法や、化学療法などを組み合わせる場合があります。

■Ⅳ期・・・放射線化学療法、放射線療法、化学療法。がんが周辺の臓器まで転移している状態であり、手術ではがんを取り除くことができません。放射線や化学療法などで、がんを縮小させることが目的になります。


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食道がんにならないために

食道がんになる危険性が高い項目は次のとおりです。

55歳以上の男性。
喫煙者…とくにたばこ1日20本以上。
飲酒者…とくに飲酒1日3合以上。あるいは強い酒をそのまま飲む。アルコールを飲む機会の多い接客業の女性など。
熱い食べものや辛い食べものが好きな人。
咽喉頭がん、胃がん、肺がん、大腸がんなどにかかったことがある。
がんの家系…両親と兄弟のなかに2人以上のがん患者がいる。
食道に病変がある…逆流性食道炎、腐食性食道炎、食道アカラシア、バレット食道など。

 7項目をあげましたが、とくに注意すべきことは、たばことアルコールです。したがって、食道がんを予防するためにしていただきたいことは以下の3点です。

禁煙。
過量の飲酒をしないこと。1日2合以下で、毎日は飲まないこと。アルコール濃度の高い種類のお酒を避けること。
食道の粘膜が荒れるような熱いもの、辛いもの、硬いものは避けること。
早めにみつけるためには
 以上のような点に注意しても、食道がんの発生を100%防ぐことは不可能です。したがって早期発見がきわめて重要となります。 
 地域での検診やかかりつけの病院での定期検査で、胃カメラ検査を受けることが肝要です。

自覚症状に気づいたら、我慢せず早めに病院を受診し、検査を受けてください。

 もし、ルゴール散布による色素内視鏡検査を行ない、ルゴールに不染な白色の粘膜が5?以下であれば、がんの可能性は低いのですが、1?以上だとがんの可能性が高くなります。
 微小な不染粘膜が発見された場合は、少なくとも6カ月後の再検査が必要となります。


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食道がんの外科手術:食道がんの手術

一般的な手術
食道がんの手術(外科手術)は、食道がんのステージによる分類では、Ⅰ期からⅢ期に対しておこなわれています。まず、がんが広がっている食道を取り除いてから、新しい食べ物の通り道をつくっていくという手術になります。

手術の範囲は、頚部、胸部、腹部の3ヶ所を切り開く場合もあります。手術に要する時間も長時間となるので、患者さんの体力に大きな負担もかかってしまいます。

負担を少しでも軽減するために、手術療法と、抗がん剤治療、放射線療法などを併用することもあります。

リンパ節の切除
手術療法では、がんに侵されている食道だけでなく、転移している可能性が高いリンパ節も切除していきます。これは、リンパ節の郭清(かくせい)といい、リンパ節を含んでいる周囲の組織をすべて切除することをさします。


リンパ節郭清では、縦隔リンパ節と腹部リンパ節の切除頚部リンパ節の切除をおこなっていきます。


頚部の切開
首を切り開いて、左右にあるリンパ節を取り除いて、食道を切除していきます。のど(咽頭)にがんがある場合には、のども切除していきます。→頚部食道がんの手術


胸部の切開
胸を切り開いて、肋骨を広げていきます。縦隔リンパ節や腹部リンパ節を切除していきます。→胸部食道がんの手術


腹部の切開
腹を切り開いて、腹部リンパ節を取り除いていきます。そして、胃を少し持ち上げて、新たな食道を再建していきます。場合によっては、小腸や大腸の一部を、食道の変わりに使うこともあります


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頚部食道がんの手術

首を切り開いて手術をおこなう
食道の上部にできたがんを「頚部食道がん」といいます。食道がんのなかでは、それほどは多いタイプではありません。

一般的な手術では、首の部分を切り開いて手術をおこなっていきます。切除するのは、頚部の食道と頚部リンパ節になります。

ただし、がんが咽頭・喉頭にまで広がっている場合には、がんの及んでいる咽頭・喉頭もあわせて切除していくことになります。

手術の順序
1.皮膚の切開
のどを切り開いて、食道周囲の動脈、静脈、神経を取り除きながら、頚部リンパ節を郭清(切除)していきます。

2.食道を取り除く
頚部の食道を取り除いていきます。がんの広がりによっては、咽頭・喉頭も切除していきます。また、がんが食道の下の方にまで及んでいる場合は、胸部食道まで取っていきます。

3.食道の再建
のどと残った食道の間に、小腸の一部を移植して、代わりの食道をつくっていきます。これが新たな食べ物の通り道になっていきます。胃を引き上げて再建することもあります。

4.気管孔をつくることも
咽頭・喉頭を切除した場合、のどに孔をあけて、呼吸ができるようにするための処置をしていきます。



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胸部食道がんの手術

胸部全体の食道を取り除く

胸部食道がん」は、食道の真ん中にできるがんで、日本人にいちばん多い食道がんになります。

胸部食道がんの手術では、一般的に、首、胸、腹の3ヶ所を切り開いて、食道を切除することになります。

広範囲のリンパ節に転移している可能性が高いためです。手術を受ける患者さんにも、多少負担があるため、健康状態をよく調べたうえで施術していきます。

リンパ節を郭清する前には、手術の前にCT検査、MRI検査をして、どれほど切除していくのかを判断していきます。

食道を引き抜く手術

食道を引き抜くという手術法もあります。「非開胸食道抜去術」といい、首と腹の2ヶ所だけを切り開きます。

この手術は、がんが早期発見できた場合、頚部食道がんの場合、肺が癒着を起こして胸を開くことができない場合、患者さんの体力が不安な場合に行われています。

胸部リンパ節の郭清ができなくなるために、がんが転移を起こしている場合は、実施することができません



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腹部食道がんの手術

胃の上部まで切除する
食道の下部にできる食道がんを「腹部食道がん」といいます。日本人の食道がんのなかでは、もっとも数が少ないタイプのがんになります。

腹部食道がんの手術では、左胸から腹部にかけて大きく切り開き、腹部食道と胃の上部までを切除していきます。がんが転移している可能性がある腹部リンパ節も、同時に郭清していきます。

手術の最後には、残りの胃を引き上げて、食道とつないで、新たな食べ物の通り道をつくっていきます。

手術にともなう合併症

腹部食道がんの手術は、患者さんの体を大きく切り開くため、それだけかかる負担も大きくなります。合併症を完全に防ぐことはできません。

手術後には、どうしても傷の痛みがあらわれてきます。痛みを我慢していると深呼吸や咳払いができず、今度は肺炎を起こしてしまう可能性もあります。

咳は我慢しないようにして、痛みがひどい場合は、痛み止めの薬を使うようにしましょう。

体力や抵抗力の低下で、不整脈を起こすこともあります。



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食道がんのステント治療

食道内に入れるステント

がんが食道内で大きくなり、食べたものが飲み込みにくくなってしまったり、通り道を塞いでしまうことがあります。

そのときに、「ステント」という管状の医療器具を食道内に入れて、食べ物の通り道を確保する治療がおこなわれる場合がありますが、これを食道ステント挿入術といい、手術ではがんを取り除くことができない場合、がんが遠くの臓器に転移してしまっている場合、抗がん剤などの他の治療法を駆使しても効果が認められなかった場合などに実施されます。

ステント治療は、がんの根治を目的とするものではなく、症状を改善する目的で行われています。とくに、治る可能性の低いようながんでは、患者さんの生活の質を向上させることが優先されます。


【ステント治療の条件】
食べ物が飲み込みにくい
食事を自分で食べようとする意志がある
一人で行動でき、寝たきりの状態でない
食道の入り口にがんができていない

ステント治療の問題点
ステント治療は、患者さんの胸などを切り開く手術ではないので、大きな体力的負担がかかる心配はありません。

ステントを食道に挿入した直後は、違和感や痛みを感じることがあります。また、気管支を圧迫して呼吸がしにくくなったり、胃の近くにステントを置くと、逆流性食道炎を引き起こしてしまうことがあります。

いくつかの問題点はありますが、多くは口から食事ができるようになるため、メリットは大きいといえます。



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内視鏡による食道がんの治療

がんを粘膜ごと切除
がんが浅く、粘膜の表面にとどまっている食道がんには、内視鏡的粘膜切除術(EMR)で治療することができます。

内視鏡でとれるがんの大きさと数には限りがありますが、安全性が高く、食道も残すことができます。また、再発率は約2%ほどという報告がありますが、リンパ節や他臓器への転移もほとんどないため期待される治療法です。


【適応される人】
患者さんが手術を望んでいない
患者さんの体力が不安で手術に耐えられない
がんがリンパ節に転移していない
食道の全周性ではなく、3分の2以下

最大のメリットは負担が小さく、食道を残せること

EMRの最大の利点は、負担の小さい治療法であり、食道を残せるという2点に尽きます。

麻酔をしなくても実施することができ、軽い痛み止めを使うだけです。緊張の強い人には、精神安定剤で眠らせることもあります。

治療にかかる時間は1時間程度で、当日は入院して点滴を受けることになります。翌日以降は食事をとることができるようになります。

内視鏡的粘膜切除術(EMR)は、安全性がきわめて高い方法ですが、1%ほどの確率で、治療中に食道の壁に孔が開くことがあります。(穿孔、せんこう)

胃や大腸の場合は、早急に開腹手術をしなければなりませんが、食道の場合は手術をする必要はありません。ごく小さな孔であることがほとんどで、点滴を1週間すれば自然にふさがってきます。

食道からは出血もほとんどなく、穿孔は患者側は気づきません。痛みを感じることもなく、熱が少し出る程度になります。



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食道がんの抗がん剤治療

抗がん剤とはがんを死滅させる薬で、その投与方法も、飲み薬や点滴、注射などいくつかあります。手術や放射線治療は、体の限られた場所に効く局所療法ですが、抗がん剤治療では、血液にのって全身に流れるので、全身に効果を発揮します。

がんが大きく全身に広がっている場合や、遠くの臓器に転移しているような場合の治療法として用いられています。また、手術後の再発予防や、再発してしまったがんに対しての治療にも使われています。


抗がん剤治療の方法
抗がん剤の点滴を4~5日続ける
   ↓
数週間の休みをおく
   ↓
もう一度点滴を4日~5日続ける
   ↓
効果があればくり返して、なければ抗がん剤を切り替えたり、他の治療法にかえる。


抗がん剤と副作用の問題
抗がん剤は放射線と組み合わせることもでき、より高い治療効果を得ることに成功しています。

抗がん剤の使用で副作用の発生が気にかかります。効果が高い半面、がん細胞だけでなく、正常な細胞にも多少のダメージを与えてしまいます。

代表的な副作用には、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢などがあります。

他のがん治療の抗がん剤の場合、全身の毛が抜けるという副作用もありますが、食道がんの抗がん剤の場合は、毛髪への影響は少なく、髪の毛がすべて抜け落ちるということはありません。



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食道がんの放射線化学療法

食道がんの治療では、抗がん剤による化学療法は単独で行われることがありますが、放射線を単独で行うことは、現在ではほとんどなくなっています。

放射線を用いる場合は、抗がん剤と組み合わせて、「放射線化学療法」として治療に当たることが一般的となっています。治療法が確立してからの歴史は浅いですが、がんの根治を目指す治療法として進歩を遂げています。


【治療成績の比較】

■放射線化学療法  3年生存率・・・30%  5年生存率・・・27%
■放射線のみ     3年生存率・・・0%   5年生存率・・・0%


放射線化学療法の目的
放射線化学療法の目的は、年齢や体力的な問題で手術ができない患者さんのために行うものでしたが、現在では、以下のように2つの目的のために放射線化学療法が行われています。


手術の治療効果を高めるため
手術を行うことを前提としている場合で、手術の効果を高める目的です。手術と放射線化学療法を組み合わせることによって、高い治療効果が得られると期待されています。


がんの根治を目指すため
がんの根治のために、放射線と抗がん剤で治すのが目的です。食道が残せてがんが消滅するというメリットがありますが、あとから手術が必要になる場合もあります。

実施前には入念な検査が必要
放射線化学療法をはじめる前には、いくつかの検査を受けることになります。内視鏡検査、胸部CT検査、上部消化管X線検査は必ず行います。

必要に応じて、超音波内視鏡検査、PET、血液検査、心電図検査も行っていきます。



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食道がんの有無を調べる検査

食道がんの有無を調べる検査がいくつかあります。

よく使われる検査法の1つに、内視鏡検査があります。内視鏡検査では、小さながんでも発見できるのがメリットとなります。近年でも、はじめから内視鏡検査でがんを見つけることが多くなってきました。

X線を使った検査には、X線造影検査があります。バリウムを飲んで、食道を流れ落ちるタイミングで撮影していきます。バリウムが食道を流れるのに合わせて撮影しなければならないために、がんの発見にはやや問題がありました。

他には、ルゴール染色法という方法もあります。これは、潰瘍や食道炎などの、がんと紛らわしい病気が併発しているような場合におこなうことがあります。

ルゴール液を食道内壁に吹き付けると、正常な細胞はルゴール液に染まって、がんの組織は染まらないという特徴を利用しています。

がんの疑いが強い場合は、組織の細胞の一部を採取して、顕微鏡で検査する生検があります。生検を受ける場合は、出血しやすい体質のことやアスピリンなどを服用していることを、前もって医師に伝えておくことが必要になります。生検では、まれに出血する事例などがあるためです。



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食道がんの進行と転移の検査

超音波検査でがんの深さを調べる
食道の粘膜にできたがんが、どの程度の深さまで進んでいるのかを調べるためには、超音波検査を行っていきます。がんの表面だけを見ても、がんの進行具合は分からないため、超音波を使用します。

内視鏡の先端から超音波を発信して、その超音波の反射の状態を調べて、がんの深さを把握することができます。


リンパ節転移を調べるCT、MRI検査
がんが食道の壁から、まわりのリンパ節や臓器に転移しているかを調べるには、CT、MRI検査をおこないます。

最新の検査方法として注目されているのが、超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNAB)です。内視鏡の先端から超音波を発信して、がんの場所を確認しながら、リンパ節に針を刺して、組織を採取していくという方法です。

従来の超音波内視鏡検査では、がんの進行度などから、リンパ節転移の予測をしていましたが、EUS-FNAB法では、組織を直接調べられるようになったので、正確な診断が可能になりました。

精度の高い診断ができるのがメリットですが、実施には医師の高い技術が必要なことや、検査ができる医療機関がまだまだ少ないことなどが課題となっています。


がんの悪性度を調べるPET検査
PET検査は、一度の検査で全身への転移の有無を調べることができる方法です。従来の方法では、肺、気管支など、食道から転移しやすい部位を1つずつ検査していました。

PETでは、放射線を放出するブドウ糖を静脈に注射したあと、からだから放出される放射線を画像に映していきます。がん細胞は、ふつうの細胞よりも分裂が早く、ブドウ糖を多く取り込むという性質があります。このため、放射線が多く放出された箇所は、がんである可能性も高くなります。

CTもPETも、患者さんはあお向けに寝て、機器の中を通るだけです。検査による痛みや副作用の心配は全くありません。



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食道がんの深さによる分類

食道壁の構造
食道壁の構造を簡単に紹介すると、内側から粘膜、粘膜筋板、粘膜下組織、固有筋層(輪状筋、縦走筋)、外膜という順に構成されています。厚さは約4mm。

がんは、内側の粘膜から発生していき、進行するにつれて外側へ浸潤していきます。また、食道の外側から発生するのもについては、がんとは呼ばず、「肉腫」として区別されています。


がんの深達度による分類
がんのもっともよく使われる分類が、深達度による分類です。よく「早期がん」や「進行がん」などと耳にすることも多いかと思われます。

「早期がん」とは、がんが粘膜層のごく浅いところにとどまっているがん(表在がん)のうち、リンパ節転移がみとめられないものをさします。

一方の「進行がん」とは、がんが粘膜下層より深く達してしまったものをいいます。固有筋層まで達していると、転移しているケースが多くなり、食道の外にまで広がってしまった場合は、完全に他へ転移しています。また、食道の内腔すべてががんに侵食されていることもあります。

「末期がん」という分類は医学的にはありません。末期がんは、一般的には、進行がんの中でも、とくにひどい病状の場合に呼ばれるようです。


発生からみた分類
発生からがんを分類する方法もあります。粘膜を形成する扁平上皮から発生するがんを「扁平上皮がん」、粘膜の内部の腺組織から発生するがんを「腺がん」と呼びます。

日本での食道がんは、扁平上皮がんの発生が9割以上を占めています。




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食道がんの病期(ステージ)分類

病期を把握してから治療を選択
食道がんに限らず、がんの治療には、病期(ステージともいう)を把握することが不可欠になります。がんのタイプや進行度の情報だけでは、適切な治療を選択することはできません。

食道がんの病期を決める要素は次の3つになります。
がんの深さ(T)
リンパ節への転移(M)
周辺臓器への転移(N)

「食道癌取扱い規約」によって定められたものであり、国際的な病期分類にもなっています。TMN分類とも呼びます。


食道がんの病期による分類
病期は、0期から4期の5段階に分けられています。

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外見上からの分類
がんの外見から進行度を分類する方法もあります。がんが粘膜下層にある表在型には、表在隆起型(Ⅰ型)、表在平坦型(Ⅱ型)、表在陥凹型(Ⅲ型)の3つがあります。

がんが粘膜下層より深くなっている進行型には、隆起型、潰瘍限局型、潰瘍浸潤型、びまん浸潤型、その他の5つがあります。

がんの外見からの分類は、個人の主観によるところも大きいですが、がんの深達度のめやすを知るうえで役に立ちます。





食道がんの生存率

日本での食道がんによる年間の死亡者数は約1万人で、がんによる死亡者数全体の3%ほどにあたり、男女比でみると、圧倒的に男性の方が多くなっています。

食道がんの生存率は、がんの進行度や治療内容によって違ってきます。食道がんの場合、初期の段階での発見が難しく、多くの場合が進行がんとして診断されるので、生存率は思わしくない結果となっています。

手術から5年後の生存率

がんが食道の粘膜にとどまっている早期がんの場合は  約80%
がんが食道の粘膜下層にまでひろがっている場合は   約50%
がんが食道の固有筋層にまでひろがっている場合は   約20%
がんが周囲の臓器にまでひろがっている場合は     10%未満
がんが遠隔した臓器やリンパ節にまで転移している場合  3%未満


手術ができない場合、その患者の余命は、多くの場合、がんの診断後半年から2年前後という結果になっています。

食道がんの5年生存率

ステージⅠ期   約80%
ステージⅡ期   約40%
ステージⅢ期   約20%
ステージⅣ    約10%




       
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食道がん治療の有名病院:北海道・東北

北海道 3病院

恵佑会札幌病院
★診療科目 外科
北海道札幌市白石区本通14北1-1 ℡011-863-2101 
北海道を・東北エリアでは、食道がんの手術件数は断然トップ。豊富な経験に基づいた診断と治療を行っている。


函館五稜郭病院
★診療科目 外科
北海道函館市五稜郭町38-3 ℡0138-51-22951 
消化器消化器系疾患の症例が多く、治療内視鏡も含めて、内視鏡検査件数は道南地区でも最多。内視鏡を用いた診断と治療のほぼ全てを行い、高いレベルでの成績を上げている。


国立病院機構函館病院
★診療科目 外科
北海道函館市川原町18-16 ℡0138-51-6281 
食道がんに対し、内視鏡、レントゲン、超音波、CT、MRIなどを用いた最新の診断・治療を駆使。


青森県 1病院

弘前大学病院
★診療科目 外科
青森県弘前市本町53 ℡0172-33-5111 
最先端の医療技術を積極的に開発・導入して外科治療のレベルの向上を図るとともに患者のQOL(生活の質)の改善を第一として診療を実施。県下では食道がんの手術件数が最も多い(2005年度)病院。


宮城県 1病院

国立病院機構 仙台医療センター
★診療科目 外科
宮城県仙台市宮城野区宮城野2-8-8 ℡022-293-1111 
食道がんの放射線化学療法を得意としている。手術難易度の高い、高度に進行した食道がんの症例に対しては、根治性と安全性を両立させる手術を積極的に行っている。


秋田県 1病院

秋田大学病院
★診療科目 消化器内科
秋田県秋田市本道1-1-1 ℡018-834-1111 
食道がんの一部に対して、開腹手術することなく、内視鏡で癌を切除・治療している。食道がんの手術件数は年間45件(2005年度)と、県内では最も多い。


山形県 1病院

山形県立中央病院
★診療科目 消化器内科
山形市大字青柳1800 ℡023-685-2626 
山形県では食道がんの手術件数が最も多い(2005年度)病院。食道がんに対し放射線化学療法を施しており、年間十数人の患者が治療を受けている。


福島県 1病院

福島県立医大病院
★診療科目 消化器外科Ⅰ
福島県福島市光が丘1 ℡024-547-1111 
福島県下で食道がんの手術件数が最も多い(2005年度)病院。進行度に応じた適切な手術、化学療法、放射線療法、免疫療法を実施。




食道がん治療の有名病院:関東

栃木県 1病院

自治医科大学病院
★診療科目 消化器内科・外科
栃木県河内郡南河内町薬師寺3311-1 ℡0285-44-2111 
栃木県下では食道がんの手術件数は最も多い(2005年度)。消化管(食道、胃、十二指腸、小腸、大腸)、肝臓、胆道、膵臓など、消化器全般の診療を行う。



群馬県 1病院

群馬大学病院
★診療科目 第一内科
群馬県前橋市昭和町3-39-15 ℡027-220-7111 
食道がんではがんの深さ(深達度)が浅いものは内視鏡的粘膜切除術にて治療を行い、深達度が深いがんで合併症などにより手術不能な場合は、光線力学的療法を行っている。群馬県下では食道がんの手術件数は最も多い(2005年度)。


埼玉県 1病院

埼玉県立がんセンター
★診療科目 消化器外科
埼玉県北足立郡伊奈町小室818 ℡048-722-1111 
内視鏡・超音波内視鏡・CT・気管支鏡などで進行度診断を行う。早期がんは内視鏡的粘膜切除を、リンパ節転移の疑われる進行がんに対しては、強力な治療を組み合わせた集学的治療を実施。


千葉県 2病院

国立がんセンター 東病院
★診療科目 消化器内科
千葉県柏市柏の葉6-5-1 ℡04-7133-1111 
がんを専門に診断・治療する病院。がんもしくはその疑いのある人を主な診療の対象とし、なかでも、頻度の高い肺がん及び消化器がん、頭頚部がん、乳がんなどの診療に主点をおいている。千葉県下では食道がんの手術件数は最も多い(2005年度)。


千葉大学病院
★診療科目 食道・胃腸外科
千葉県千葉市中央区亥鼻1-8-1 ℡043-222-7171 
積極的に内視鏡治療、腹腔鏡手術を取り入れている。食道がんは、現在までに3000例以上の治療実績があり、先端医療にも積極的に取り組んでいる。


東京都 8病院

東京医科歯科大学病院
★診療科目 呼吸器外科
東京都文京区湯島1-5-45 ℡03-3813-6111
食道がんの実力病院として全国的にも高く評価されている病院。内視鏡、超音波内視鏡、手術療法、内視鏡治療、放射線治療、化学療法などを実践しており、中でも化学放射線用法を積極的に導入している。


癌研究会有明病院
★診療科目 消化器センター
東京都江東区有明3-10-6 ℡03-3520-0111
食道がんに対する実力度は全国最上位に評価されている。できるだけ身体の負担の少ない治療(内視鏡治療、腹腔鏡手術、インターベンション治療)を選択し、必要であれば手術や化学療法など積極的な治療を行う。


虎ノ門病院
★診療科目 消化器外科
東京都港区虎ノ門2-2-2 ℡03-3588-1111 
部長以下専任のスタッフ7名と4人前後の病棟医で4つのチームを作り、60~70人の入院患者さんの診療に当たっている。各チームの主任スタッフが主治医となり、ベッドサイドに密着した診療を行う。全国的にもトップクラスの実力病院。


東京女子医科大学病院
★診療科目 消化器病センター外科
東京都新宿区河田町8-1 ℡03-3353-8111 
消化器の病気については全ての疾患を網羅し、食道、胃、小腸、大腸、肛門、肝胆膵などすべての消化器(胃腸科)疾患に対する検査、治療を行っている。全国的にもトップクラスの評価を得ている。


東京都立駒込病院
★診療科目 外科
東京都文京区本駒込3-18-22 ℡03-3823-2101  
食道がんを中心に、各種の良性疾患の治療も行っている。内科、放射線科と協力し、精密な検査を行い、その内容を患者に十分納得いくまで説明した上で最良の治療を選択。全国的にもトップクラスの実力病院。


NTT東日本関東病院
★診療科目 外科
東京都品川区東五反田5-9-22 ℡03-3448-6111 
全国的にもトップクラスの実力病院。食道がんの放射線化学療法や、術後再発した患者の抗癌剤の治療も外科で行っており、さらに他院で手術を受けらた患者の術後再発の疼痛緩和や入院での治療も引き受けている。


順天堂大学 順天堂医院
★診療科目 食道・胃外科
東京都文京区本郷3-1-3 ℡03-3813-3111 
発生頻度の高い胃がんはもとより、より専門性が必要とされる食道がんも関連病院をはじめ各施設から多くの紹介があり、年間90~100例前後の食道がんの手術を行い、良好な成績を収めている。 食道がんの手術件数は全国でも1、2を争う。


国立がんセンター 中央病院
★診療科目 消化器内科
東京都中央区築地5-1-1 ℡03-3542-2511
食道がん、胃がん、大腸がんの患者の内科的治療を行っており、化学療法(抗癌剤治療)や放射線治療部との協力による放射線治療と化学療法との併用が中心。また、終末期の患者に対する緩和医療も行う。食道がん手術件数は全国最多(2005年度)。 


神奈川県 1病院

東海大学病院
★診療科目 消化器外科
神奈川県伊勢原市望星台 ℡0463-93-1121
スタッフ19名、臨床助手8名で入院および外来診療にあたっている。良性疾患から治療困難な悪性疾患までを対象として、質の高い診断とハイレベルで安全性の高い治療を行う。神奈川県では食道がんの手術件数第1位。全国でも屈指の実力病院。


食道がん治療の有名病院:中部・北陸・東海

新潟県 1病院

新潟県立がんセンター 新潟病院
★診療科目 消化器内科
新潟市川岸町22-15-3 ℡025-266-5111 
外科切除不能進行食道癌に対し根治を目指した放射線同時併用化学療法、追加化学療法(抗癌剤治療)等の治療を積極的に行う。切除不能進行食道癌症例の2年生存率は43.6%、5年生存は32.7%でありこれは全国トップレベルの治療成績。


岐阜県 2病院

岐阜県立多治見病院
★診療科目 外科
岐阜県多治見市前畑町5-161 ℡0572-22-5311 
初診の紹介率が50%超。入院は主に手術を受ける患者を対象としており、「納得の得られる、優しい説明」をモットーに患者に接している。


大垣市民病院
★診療科目 消化器科 岐阜県大垣市南頬町4-86 ℡0584-81-33411 
最先端の知識および技術を導入して常に患者様に還元できるように努力している。年間の新入院患者数は約2100人(平成14年度、消化管32%、肝臓52%、胆道・膵臓15%、その他1%) で、消化器系全般にわたる診療を行う。


静岡県 3病院

静岡県立 静岡がんセンター
★診療科目 食道外科
静岡県駿東郡長泉町下長窪1007 ℡055-989-5222 
全国でもトップクラスの実力病院。手術件数も県内で一番多く、他科・他職種チームで合併症や症状緩和に高い効果を発揮している。


静岡県立総合病院
★診療科目 消化器センター外科
静岡県静岡市葵区北安東4-27-1 ℡054-247-6111 
早期がんに対する内視鏡治療を積極的に実施。 進行度と手術の安全性を十分検討した上で 、手術後の痛みが少ない腹腔鏡あるいは胸腔鏡を用いた手術を行う。


愛知県 2病院

名古屋第一赤十字病院
★診療科目 外科
愛知県名古屋市中村区道下町3-35 ℡052-481-5111 
主に、消化器、乳腺、内分泌疾患を治療。一般外科の年間の手術件数は約1400例で、県下でも1~2位を争う症例数。内視鏡を用いた食道がん治療を積極的に行っており、また進行消化器がんに対する化学療法も、数多く手がけている。


藤田保健衛生大学病院
★診療科目 上部消化管外科
愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1-98 ℡0562-93-2111 
「がん治療における根治性の追及と低侵襲手術ならびに術後のQOLの向上」をめざし、内視鏡下がん手術を積極的に行っている。


愛知県がんセンター 中央病院
★診療科目 胸部外科
愛知県名古屋市千種区鹿子殿1-1 ℡052-762-6111 
愛知県では食道がんの手術件数はトップクラス。病気の進行度と患者の全身状態から判断して、最も妥当と思われる治療法を消化器内科医、放射線治療医、胸部外科医の総意に基づいて勧めている。