逆流性食道炎とは、胃液や胃の内容物などが食道に逆流することにより、食道の粘膜に炎症が起こる病気です。
胃液には、胃酸という食物を消化するための強い酸が含まれていますが、食道の粘膜は、胃の粘膜とは異なり胃酸の消化力を防ぐ機能を持たないので、胃酸が食道に逆流すると粘膜の炎症が起きます。
逆流性食道炎は、60歳以上の高齢者に多く発症し、特に女性の高齢者に多いといわれています。
主に欧米でよく見られた病気でしたが、日本でも増加の傾向にあります。
日本での逆流性食道炎の増加の理由としては、食事スタイルの欧米化、社会全体の高齢化などがあるとされています。
逆流性食道炎の原因
胃酸が逆流する原因は、胃酸の過剰分泌です。
欧米化した食生活、すなわち肉や油っこいものなど脂肪分が多い食品を日常的に摂取するような食生活を送っていると、胃の活動が活発になりすぎて胃酸の分泌量が増加し、また胃酸の逆流が起きやすくなります。
食物の過剰摂取も胃の活動を活発にし、胃酸の過剰分泌を招きます。
また、下部食道括約筋の機能の低下も原因です。
下部食道括約筋とは、食道と胃のつなぎ目にあり、胃から食道への逆流を防ぐ働きをする筋肉です。
この下部食道括約筋が、老化や胃の手術などによりその機能が低下してしまうと、胃酸の逆流が防げなくなります。逆流性食道炎の患者に高齢者が多いのはこのためです。
腹圧の上昇も逆流性食道炎の原因として考えられます。具体的には、肥満やベルトなどによる腹部の締め付けや、しゃがんだり重いものを持ったりするなど力むことにより胃が圧迫され腹圧が上昇し、胃酸の逆流が起こりやすくなるというものです。
逆流性食道炎の症状
逆流性食道炎の症状にはいくつかの種類がありますが、中でも胸やけ・嚥下障害・呑酸は、逆流性食道炎の三大症状といわれています。
逆流性食道炎の症状のひとつであるせきが、呼吸器疾患である喘息と関係があるともいわれています。
これは、胃から食道へ胃酸が逆流する際に、気管支内に胃酸が吸入されてしまい、吸入された胃酸が気管支に刺激を与えて喘息の症状を悪化させるというものです。
逆流性食道炎の検査
逆流性食道炎の検査は、内視鏡検査が中心となります。
細長い管の先端にビデオカメラなどがついた医療機器で、一般的には胃カメラと呼ばれているものですが、この内視鏡を主に口から挿入し、食道内の状態を検査します。
逆流性食道炎は症状が特徴的なので、医師が患者の症状を見るだけで診断ができる場合もありますが、診断を確定するために、また他の病気ときちんと区別するためにも内視鏡検査を行います。
その他の検査としては、phモニタリングや問診などがあります。
逆流性食道炎の検査とその内容
内視鏡検査
主に口から内視鏡を挿入し、食道内の状態を調べる
胃酸の逆流による食道粘膜のダメージ(びらん・ただれ等)の程度を確認する
逆流性食道炎の検査の中心
phモニタリング
食道内にカテーテルを挿入し、食道内のph(酸度)を測定する
食道への胃液の逆流を調べる
問診
逆流性食道炎の自覚症状、生活習慣、既往症(過去にかかった病気)、現在服用している薬などについて医師から質問される
逆流性食道炎の治療
逆流性食道炎の治療としては、薬物療法、手術療法、生活習慣の改善などがあります。
薬物療法では、飲み薬が使用されます。手術療法は、現在のところあまり一般的ではありません。
また生活習慣の改善としては、食生活の見直しや腹圧の上昇を抑えることなどがあります。
逆流性食道炎の予防
食生活の見直しがあげられます。欧米化した食生活や食物の過剰摂取は胃の活動を活発にし胃酸の分泌を促進するので、胃への刺激が少ないものを腹八分目程度に摂取することを心がけましょう。
腹圧の上昇を抑えることもあげられます。腹圧の上昇は、胃を圧迫し胃酸の逆流の原因になるため、ベルトでお腹をきつく締めすぎない、無理をして重いものを持たない、肥満に気をつけるなどです。