放射線療法は手術と同様に限られた範囲のみを治療できる局所治療ですが、機能や形態を温存することをめざした治療です。
高エネルギーのX線などの放射線を当ててがん細胞を殺します。放射線療法には2つの方法があります。
放射線を身体の外から照射する方法と、食道の腔内に放射線が出る物質を挿入し身体の中から照射する方法です。
食道がんの放射線療法は治療の目的により大きく2つに分けられます。がんを治してしまおうと努力する治療(根治治療)と、がんによる痛み、出血などの症状を抑さえようとする治療(姑息治療、対症治療)です。
(1)根治治療
根治治療の対象は、がんの広がり方が放射線を当てられる範囲にとどまっている場合です。根治治療の放射線療法は、外照射だけを週5日6~7週続けるやり方と、外照射5~6週に2~3回の腔内照射を組み合わせるやり方があります。
放射線療法と抗がん剤治療を同時に行うほうが放射線療法だけを行うより効果があることがわかってきました。
放射線療法に抗がん剤治療を加えることで手術をしなくても治る患者さんが増えたという報告もあります。治すことをめざして治療をする場合は、放射線療法と抗がん剤治療を同時に行うことが勧められます。
(2)姑息治療
姑息治療は骨への転移による痛み、脳への転移による神経症状、リンパ節転移の気管狭窄による息苦しさ、血痰などを改善するために行われます。症状を和らげるために放射線は役に立ちます。症状がよくなれば目的は達成されるので、根治治療の時のように長い期間治療しません。2~4週くらいの治療です。
(3)放射線療法の副作用
放射線療法の副作用は、主には放射線が照射されている部位におこります。そのため治療している部位により副作用は異なります。また副作用には治療期間中のものと、治療が終了してから数ヶ月~数年後におこりうる副作用があります。
治療期間中におこる副作用は、頸部を治療した場合、嚥下時の違和感・疼痛・咽頭の乾き・声のかすれ、胸部を治療した場合は嚥下時の違和感・疼痛、腹部を治療した場合は腹部不快感・嘔気・嘔吐・食欲低下・下痢などの症状が出る可能性があります。
照射部の皮膚には日焼けに似た症状が出てきます。その他に身体のだるさ、食欲低下といった症状を訴える方もいます。
血液障害として白血球が減少することがあります。
副作用の程度には個人差があり、ほとんど副作用の出ない人も強めに副作用が出る人もいます。症状が強い場合は症状を和らげる治療をしますが、時期がくれば自然に回復します。
副作用としては、心臓や肺が照射部に含まれているとこれらの臓器に影響が出ることがあります。
脊髄に大線量が照射されると神経麻痺の症状が出ることがありますが、神経症状が出る危険がないとされている程度に照射線量を設定するのが普通です。